スーパーなどの小売店では顧客による万引きだけではなく、“内引き”と呼ばれる内部犯による万引きも存在している。施設警備会社として万引き対策を行っているNICCOの日南休実会長は「店舗の事情に詳しい従業員による犯行のため、通常の万引き以上に捕まえるのが難しい。なかには30年以上働いたスーパーで内引きを繰り返し、被害推定額が1000万円を超えたケースもある」という――。(第3回)

※本稿は、日南休実『万引きGメンの憂鬱』(ザメディアジョン)の一部を再編集したものです。

女性はワイン、スーパー マーケットのハンドバッグでそれを隠してのボトルを盗んでいます。
写真=iStock.com/vchal
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捕まえるのが非常に難しい“内引き”

万引き犯にもさまざまなカタチがありますが、万引きの中でも犯人を捕まえるのがひときわ難しいものに(同時に、犯行を発見するのも難しいものに)“内引き”という種類があります。

内引きというのは簡単に言うと“内部犯による万引き”のことです。お店で働いている従業員が自分の店に並んでいる商品を盗むことをいいます。

なぜ内引きを捕まえるのが難しいかというと、スーパーやディスカウントストアなど小売店の多くにはそこで働く従業員のために“社割”と呼ばれる制度も一つの要因です。社員割引を利用して商品を安く買うというのなら制度に沿ったもので何の問題もないのですが、従業員の中にはその特典を利用し、タダで商品を持って帰ろうとする不埒な輩も存在します。

たとえ社割がなくても、たとえばスーパーでパートとして働いた後、そのまま店で夕食の食材を買って帰るというのはザラにある話です。しかもその店で働いているスタッフならレジの扱い方もわかっているし、商品を持って外に出ても不自然だとは思われない……こうした状況の中で悪意を芽生えさせた従業員が、ついつい盗みに手を染めてしまうのです。

これはいわば「味方の中に敵がいる」状態だといえます。犯人を見つけるまでには通常以上の困難がありますし、さらに同僚を疑わなければならないという点で非常に気分の良くないものです。さらに相手はこちらの手の内を知り尽くしている店舗スタッフ。どこに店の死角があるか、どうやったらバレないかも知っているし、さらに万引きGメンがいつシフトに入っているか、どの人物がGメンなのかも把握しているのでタチが悪いのです。

今回はそんな内引き犯との戦いを2例ほど紹介しましょう。