報道機関の自律は記者クラブの基本だが…

外国特派員協会は、正式名称を「日本外国特派員協会」という。英語名The Foreign Correspondents' Club of Japanで略称はFCCJ。ホームページでは「世界で最も古く、最も権威のある記者クラブのひとつ」と自己紹介している。会員の資格として「日本を拠点とし、その記事の大部分が海外へ報道される記者」を対象にする組織だ。

米国のニューヨーク・タイムズ、CNN、英国のBBCなどの欧米の主要メディアの記者たちが所属している。記者クラブの自律的な判断でゲストを呼んで記者会見や講演会などを開いている。メンバーはそれぞれの会に自由に参加することができる。

日本のメディアの記者たちが所属する記者クラブも同じように「自律的な判断」に委ねられているはずだが、なぜ既存の日本のメディアの記者たちが所属する記者クラブでは、自衛隊内の性暴力問題や宗教2世の問題、それに入管での人権侵害の会見などが満足に行われないのだろうか。

元自衛官五ノ井里奈さん
写真=時事通信フォト
陸自性被害問題の懲戒処分などについて記者会見する元自衛官五ノ井里奈さん=12月19日午後、東京都千代田区の日本外国特派員協会

「縦割り」が障壁になっている

日本の個別の記者クラブは、それぞれ中央省庁や政党、大企業ごとに「縦割り」になっていることが大きな障壁になっている。官庁などと同じように「縦割り」のため、防衛省の記者クラブ、文部科学省の記者クラブ、東京の裁判所や検察庁、弁護士会などを担当する司法クラブなど細かく分別されていて、所属する記者たちはそれぞれ担当する組織の官僚らと同じような問題意識になりがちだ。

記者たちは記者室など官公庁などの建物を「間借り」している状態で、記者会見の場に当該組織の広報担当者なども聞きに来ることができるため、記者会見で話をする当人にとっては無言の圧力を受けやすい。記者の側も日頃情報提供を受けている組織に対する遠慮や忖度そんたくなどが働きやすい。

そういう意味では、役所等の中にある記者クラブが完全に「自律的に運営」されているのかどうかはかなり疑問だ。

さらに、「縦割り」の担当であるがゆえに、記者たちの視野が極端に狭くなりがちである。防衛省の記者クラブにいる記者たちは最新兵器や防衛システム、「敵基地攻撃能力」などの法概念については防衛省の幹部や自衛隊幹部と同じくらいの専門的な知識を求められるため、そうした問題に対しては関心が人一倍強い。その一方で、「女性隊員への性暴力」のような問題については門外漢で、どれほどの重要性があるニュースなのか、記者自身が判断できない場合が少なくない。