元信者の牧師「裏通りで罵倒され、腹を蹴られた」
自分たちを批判する者に対して、旧統一教会の信者は敵とみなして激しい攻撃をしかけてくることがあります。例えば、被害者救済を行う弁護士などに誹謗中傷のビラを配ったり無言電話をかけたり、といった手法はよく知られていますが、それだけではありません。
元信者で、現在は日本基督教団白河教会の牧師である竹迫之(たけさこ・いたる、55歳)さんは、1980年代に脱会後、街頭で活動する信者らに声をかけたところ、「人気のない裏通りに連れこまれて『サタン(悪)』などと言われ、腹を含む複数個所を蹴られた経験がある」と証言します。
同じく元信者である筆者自身は、暴力を振るわれたことはありません。しかし、かつて教団を相手に民事裁判を起こした時には、多くの信者が傍聴席に押し寄せ、証言台に立つ私に向かい「自分も加担していただろう」と被害者ヅラするなというような言葉を浴びせかけられました。
旧統一教会の信者のさらなる卑劣な行為は後述しますが、なぜ彼らは敵対的な言動をすることに躊躇がないのか。それは彼らの心の根底にある教団の教えが大きく影響しています。
サタン(悪)側の相手の行動を徹底的に敵視する
拙著『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)でも触れましたが、信者は最初に「創造原理」という教義を叩きこまれます。それは、彼らが言うところの「神様が本来作るべき理想の世界」。人間社会はそうした世界とまったく違っており「堕落」していると教えられ、信者たちも罪意識を抱かせられます。そして、メシヤとして再臨した文鮮明教祖の救いに、あずかろうと必死に活動をするのです。
旧統一教会の経典である「原理講論」の中には「二性性相」という教えがあります。簡単にいえば、この世の中はすべて2つに分けられて存在しているという考え方。人間は、男と女。動物はオスとメス、植物はおしべとめしべ……。教団ではすべて2つに分けて考えさせて、実践させていきます。その延長線上にあるのが「善と悪」の二極思想の考え方。この2つに極端に分けて考える思考こそが、旧統一教会が社会と軋轢を生む最大の原因になっています。
教義では、人類が堕落したことで、この世の中はサタン(悪)の世になった、全人類がサタン側の人間になってしまった、と説きます。それゆえに、旧統一教会の教えを全人類に信じさせて、神様の世の中にしなければならない、と。彼らはそれを「善」としてとらえ、それを阻害する動きをすべてサタン側の行動としてとらえて敵視するわけです。