「ウルトラ・ビッグデータ」から売れ筋を分析

単なる安売屋とは違うシーインの強さは、データ活用による世界中の「流行分析」と、SNSマーケティングにある。

我々が普段使っているレベルを遙かに超える、いわゆる「ウルトラ・ビッグデータ」といっても良い、巨大データ分析によって、世界中で今売れる商品を探し出す。

その売れ筋情報をもとに、AIが、中国・広州の3000を超える工場がクラウドに上げた残反・残品情報の中から、商品をピックアップ。

MDを組み上げ、世界中にクーリエ(国際宅配)便を使って個配(個別配送)し、売上を最大化させている。

シーインはもともとデジタルマーケティング会社から発展したため、この程度の芸当は朝飯前なのだ。

中国に出荷子会社を作り、輸出税を無税に

特筆すべきは、世界のアパレルの生産工場が集まる中国広州を拠点に、商品集荷から出荷、ラストワンマイルまでのシンプルなサプライチェーン体制を築いていることだ。

中でも恐るべきことは、中国の輸出、および、米国の輸入関税を無税化している点である。

実は、世界で繊維製品に関税をかけていない国はない。

輸入関税は徐々に撤廃されているが、繊維、アパレル産業は国の発展の初期段階における重要産業であり、普通は関税で保護されている。

しかし、「税金の抜け道」は存在する。

例えば、中国のような共産主義国では一般的に外貨が国から出て行くことを嫌がるので、独自の関税制度を設けている。

そのため、外資系企業が中国市場で販売する場合には通常、税金がかかる。

そこで、その税金を回避するため、外資系企業では中国に製品の輸出出荷子会社を作ることが多い。

製造段階で中国の工場へ素材を販売し、その製品が再び中国から輸出されるという「裏付け」を作るためだ。

そのようにして、商品の付加価値分だけの外貨が中国子会社に残るようにして、関税を回避しているのだ。これを委託加工貿易と呼ぶ。

税金を回避するため、輸出出荷子会社を作る
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
税金を回避するため、輸出出荷子会社を作る(※写真はイメージです)