主人公が急に美女にモテたり、お金持ちになったりするストーリーの中国のスマホゲームの広告をネット上で観たことはないだろうか。中国のコンテンツビジネスに詳しい峰岸宏行さんは「こうした広告は中国の地方都市向けに作られている。多額のギャラでタレントを雇用できる開発会社が採る宣伝手法で、日本でも一定の効果があるようだ」という――。

中国スマホゲーム広告によく採用される「俺最強」要素

若い美女を助けたら1億円もらって起業。事業に成功して、自分を振った女を見返す――。そんな怪しい日本語の広告をSNS上で見かけたことはないだろうか。そのほとんどは中国製アプリゲームの広告だ。

もっとも有名なのは、「マフィア・シティ‐極道風雲」(Yotta Games)だろう。サウナに入る極道幹部にぞんざいな扱いを受けて怒った部下がサウナの温度を上げて幹部を倒し、自らが幹部になる様子を描いた動画だ。

「マフィア・シティ‐極道風雲」(Yotta Games)Yotta Games公式ウェブページより
「マフィア・シティ‐極道風雲」(Yotta Games)写真=Yotta Games公式ウェブページより

マフィア・シティは日本では主にヤフーで広告を打っており、中国製ゲームの中では「ヤフー広告の王」と呼んでも差し支えない。私の知る限りでは少なくとも数十もの異なる映像広告や静止画広告が出稿されている。それらの多くは、キャラクターが一気に貧乏人から大金持ちとなって地位が上がったり、急に美女にモテたりするといった内容である。

筆者はこういった広告をその特徴から「俺最強系広告」と呼んでいる。

不思議なことに、広告を見て実際にダウンロードしてみると、ゲーム内でそういった場面はほとんどなく(ゲームによっては全くないことも)、ゲームシステムは使いまわしであることも多い。中国ではこれを「換皮」(皮を換えた)と呼ぶ。

マフィア・シティのほか「魔剣伝説」「アイアム皇帝」「おねがい社長!」といったゲームが、同様の広告戦略を採っているのを確認している。

なぜ中国のスマホゲーム会社は似たような広告戦略を取るのだろうか。