環境問題などに配慮した衣服「サステナブルファッション」が注目を集めている。環境省は「59%の人は関心を持っている」という調査結果も発表している。経営コンサルタントの河合拓さんは「消費者庁の調査によると、アパレルの購買要因にサステナブル対応をあげた人はわずか2%。環境省の調査にはトリックがある」という――。(第1回)
※本稿は、河合拓『知らなきゃいけないアパレルの話』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
サステナブルファッションというまやかし
アパレル業界の環境問題と人権問題は、映画『THE TRUE COST』を発端に、多くの人々に知られていった。
だが、アパレル業界は安易な解決策を提示しようとしている。
それが、「サステナブルファッション」と称するものだ。
環境省が立ち上げた「SUSTAINABLE FASHION」というホームページがある。
そこには、ファッション商品の原材料調達から店頭に届くまでのCO2排出量、水の消費、水質汚染など、環境負荷が具体的な数字で掲載されており、「より安くより多くって、いいこと?」と書かれている。
そこで示されている「国内アパレル供給量・市場規模の推移」によれば、国内のアパレル市場規模は、バブル期の1991年は14.7兆円あり、供給量(アパレル企業側の総投入量)は約20億点であった。
ところが、2019年には市場規模は10兆円程度にまで減少。一方、供給量は約35億点へと、ほぼ倍増している。
さらに、衣服一枚当たりの平均単価については、90年の6848円から19年の3202円へ、半額以下に落ち込んでいる(図表1参照)。
サステナブルファッションを推進したい環境省は、統計の結果「消費者の59%はサステナブルファッションへ関心がある。だから企業は、サステナブルファッションを生産せよ。それによって、廃棄されれば再利用される、あるいは土に帰るという循環型経済に移行しよう」と主張している。
しかしこの「59%」にトリックがある。