なぜ日本では再生可能エネルギーの活用が進まないのか。東京大学の丸川知雄教授は「再生可能エネルギーの活用には、出力の不安定性と高い蓄電コストというネックがあるが、日本にはこの2つの課題を解決する揚水発電所が原発27基分もある。揚水発電のインセンティブを設計しなおすべきだ」という――。
再生可能な未来の電池のイメージ画像
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中国にも後れを取っている日本の再エネ

日本政府は、わが国の二酸化炭素の排出量を2030年には2013年の半分近くに削減し、2050年には実質ゼロにすることを国際的に約束した。だが、その約束の実現に向けての足どりはきわめて心もとない。経済を落ち込ませないという前提の下で排出削減を実現するには、二酸化炭素を排出しない太陽光、風力といった再生可能エネルギーや原子力発電への切り替えを進めるしかない。

しかし、原発に関しては福島第一原発の事故によってその安全性に大きな不安が生じたため、今後の新設は難しく、既存の原発の再稼働や置き換えを進めるのがせいぜいであろう。となると頼みは再生可能エネルギーということになるが、日本は再エネへの転換において諸外国に後れを取っている。

2021年時点で日本の発電源に占める風力や太陽光など再エネの割合は12.8%で、イギリス(37.7%)やドイツ(37.2%)などヨーロッパの先進国に大きく水をあけられているだけでなく、トランプ政権時代には温暖化対策に消極的だったアメリカ(14.2%)や、温暖化対策に日本ほど踏み込んだ約束をしていない中国(13.5%)よりも低いのである。

発電量が不安定かつ蓄電コストも高い

再エネは自然の風や日照を頼りとするため、人間の都合で発電量を増やしたり減らしたりできない点が難点である。私の家の屋根でも太陽光発電をしているが、春、夏、秋は太陽光発電で家に必要な電気はすべて賄ったうえでもなお電気の余剰がある。ところが冬になると、わが家では暖房に電気を用いているうえ、熱が逃げやすい構造をしているので、屋根からの電気では到底間に合わず、大量の電気を購入せざるをえない。

こうした再エネ固有の難点は蓄電ができれば克服できる。蓄電というとまず蓄電池を思い浮かべる人が多いだろうが、蓄電池は高価なのが難点である。実はわが家でも大枚はたいて蓄電池を据え付けたのだが、天気のいい日ならば昼間ためた電気を夜使うことでほぼ一日中電気を買わずに済むものの、天気のいい日の余剰分を雨降りの日までためておくことはできないし、まして秋までの余剰分を冬使うこともできない。