もともとは原発を補完する存在だった
いったいなぜ揚水発電所の稼働率がこんなに低いのかというと、もともとそれが原発とセットで作られてきたという経緯があるためである。
原発は出力の調整ができず、常時フル稼働し、定期点検の期間は発電量ゼロになってしまうから、再生エネとは違った意味で融通が利かない。原発は夜間も稼働し続けるため夜間の電力が余るということが原発の難点としてあり、そうした原発によって生じる電力の余剰をならすために揚水発電所が作られた。
図表1にみるように、2013年度と2014年度の揚水発電所の稼働率はほぼゼロであるが、この2年間は原発もすべて止まっていた。2015年度に原発が再稼働を始めると揚水発電所の稼働率も高まっており、揚水発電所が原発を補完するものと位置付けられていることが明らかである。
ただ、2020年度は原発の稼働率がかなり下がったにもかかわらず、揚水発電所の稼働率はむしろ上がっており、再エネの利用による電力供給のデコボコをならすためにも使われ始めていることがうかがえる。それでも揚水発電所はまだまだ余力を残している。
電力危機に備えるのにうってつけ
にもかかわらず、メディアでは再エネの出力の不安定性ばかりが強調され、九州電力管内などでは太陽光発電が過剰だとして、太陽光発電所の出力抑制がたびたび行われている。日本がCO2排出量削減の目標を達成するためにはまだまだ再エネによる電力生産を増やしていかなければならないというのに、今から再エネの出力を抑制しているようでは、排出量実質ゼロなんてとうてい達成できないだろう。
こういうときこそ揚水発電所によって余剰電力を使って水をためておき、電力が足りなくなるときに備えたらいいのではないだろうか。
おそらく電力会社のなかでは、太陽光発電の余剰分を買い上げて揚水発電所で貯水し、あとで発電して電力料金を稼ぐよりも、電力需要が多いときには火力発電所を回して発電した方がおトクだとそろばんをはじいているのだろう。電力会社が火力発電所と揚水発電所を両方とも所有しているため、わざわざ揚水発電所を使うインセンティブが乏しいのである。
日本の膨大な揚水発電所の能力がほんの一部しか活用されていない現状を打開するためには、最近中国で始まった試みが参考になる。