「人権のためにはパーカー1着を1万7000円で売るべき」は正しいのか

こうした事実認識は、恐ろしいほど間違っている。

過剰仕入れをしたアパレルはキャッシュフローが悪化し、運転資本に回す金さえ工面できなくなる。

こうした企業を与信オーバーしてまで資金面で支えているのが金融機関である。

つまり、いずれ金融機能が正常化すれば、売れない在庫を抱えているような企業は淘汰とうたされ、産業は新陳代謝していく。

また、「作りすぎても儲かる」などは、会計の基本的ルールを知らない人の意見だ。

他には、「パーカー1着を1万7000円で販売することが、工場に対して人権を維持できる価格だ」と断じる有識者もいた。

だが、そんな値段でパーカーを販売すれば、ほとんどの消費者はユニクロの1980円のパーカーを買うだろう。

経済というものをわかっていないのである。

ほとんどの消費者はユニクロの1980円のパーカーを買うだろう
写真=iStock.com/Fran Rodriguez
ほとんどの消費者はユニクロの1980円のパーカーを買うだろう(※写真はイメージです)

「アフリカの難民がハイブランドを着ている」という冗談話

一方で、社会的責任とビジネスを両立できる企業達もいる。

それが、ハイブランドと低価格アパレルだ。

ファッション誌をみれば、あちこちでSDGsへの取り組みが上げられているが、どれもスーパーブランドであることにお気づきだろうか。

「マズロー欲求5段階説」で説明されている通り、人は、まず自分が生きてゆくという基本的な欲求が満たされれば、社会に貢献したいと思い、さらに高次な欲求に昇華する。

ハイブランドは、消費者も自我確立・維持欲求など遙か昔に満たされ、むしろ「社会的意味がある自分でありたい」と思う層に訴求をしている。