新しい職場に来てみたら、派閥争いで職場の雰囲気がギスギスしている。そんな時はどうしたらいいのだろうか。天台宗の僧侶、髙橋美清さんは「職場で何が起こっているか、一歩引いた視点で『諦観』し、絡まった人間関係の外側から丁寧にほぐしていくといい」という――。
天台宗僧侶の髙橋美清さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
天台宗僧侶の髙橋美清さん

新しい職場で派閥争いに巻き込まれた

転職のみならず、組織の統廃合やグループ会社への出向など、ビジネスパーソンには慣れた環境を離れ、新たな環境に身を置かなければならない時があります。すんなり新しい環境になじめればよいですが、「現場であまり歓迎されていない」「派閥があり人間関係がギスギスしている」といったケースもあり、ご相談を受けることもしばしばです。

以前、地方のグループ会社に出向になった男性(仮にCさんとしましょう)が、「派閥争いに巻き込まれて困っているんです」と相談に来られたことがありました。Cさんは、グループ会社で現場のマネジメントを行う人材が足りないということで、管理職として出向することになりました。ところが新しい職場に行ってみると冷ややかな対応をされ、職場の雰囲気もピリピリしています。その背景には、派閥争いがあるようでした。

私はCさんにまず、「いまの職場で何が起こっているか、一歩引いてよく見ることです」と伝えました。

会社の成り立ち、派閥の中心人物は誰なのか、その人はどういういきさつでここに来て、何が原因でもめているのか……。そういったことを、先入観にとらわれず、一歩引いた立場から細やかに「る」んです。

仏教用語でよく聴くことを「諦聴ていちょう」、よく観ることを「諦観ていかん」と言います。そうやって、じっくり社内を見渡していくと、社内の人物相関図のようなものが浮かび上がってきました。つまびらかになった相関図は、真ん中にいけばいくほど複雑に絡まっています。

では、最も絡まっているところへ、よそからやってきた第三者がいきなり立ち入ろうとしたらどうでしょう? 状況はさらにややこしくなるだけです。細いネックレスが絡まった時、無理に結び目をほどこうとすると切れてしまいますよね。それと同じです。

絡まった人間関係は遠い所からほぐす

そこでCさんは、会社の相関図をさらによく「観て」みたそうです。すると、派閥争いに直接絡んではいないけれど、両方の派閥の中心人物から一歩離れたところにいるという人の存在に気が付きました。その話を聞いた私は、「派閥の中心人物ではないけれど気になる人なのであれば、しばらくその人の動向を観察してみては?」とご提案しました。

はじめは、「この方はパートですし、事情をよく知らないのでは?」などと言っていたCさんですが、後に、「あのパートさん、こっちの派閥に属しているように見えて、別の派閥とつながっていました。火種を大きくしているのは、どうもこの方だったみたいです」と連絡がありました。