天台宗僧侶の髙橋美清さんの元に寄せられる悩みの中で、とりわけ多いのが嫁姑問題だ。髙橋さんは「こうした相談には、仏教の教え『四摂法』についてお話しします。それでも関係性が変わらず、つらく苦しい状態が続くのであれば、『縁を切る』ことを考えてもいい」という――。
天台宗僧侶の髙橋美清さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
天台宗僧侶の髙橋美清さん

「瓶のふたを開けに来い」という姑

人間関係は、相手によって合う・合わないがあります。一目会った瞬間から「この人とは気が合う」と思える人もいれば、どこまでいっても合わない人もいます。それが仕事関係であれば、業務上は大人の対応をして、それ以外は会わなければいいだけの話ですし、職場の上司なら転職という手もあります。

しかし、姑の場合はそうはいきません。気が合わないからといって簡単に縁を切ることはできませんし、それが原因で夫婦仲までこじれたり、両親と義理の両親がもめることもあります。嫁姑問題に苦しんでいる人は本当に多く、私のところに来られる方の相談でも一番多いです。永遠のテーマだと思います。

「夫のことは好きだけど、義母と会いたくないので里帰りしたくない」など、相談は妻の側から受けることが多いです。ただそうなると、夫は母親と妻の間で板挟みになってしまいますし、孫はおばあちゃんに会えなくなってしまう。影響が家族全体に広がります。

以前、相談を受けたある40代の女性は(仮にAさんとしましょう)、近所に住んでいるお姑さんから「ジャムの瓶のふたが開かないから開けに来てくれ」「今からそうめんをゆでに来い」など、ささいなことで呼びつけられてはこき使われていたそうです。まるで王様と家来のように……。このままでは、Aさんの心身が持たないと感じました。

人間関係の改善に役立つ「四摂法」の教え

では、どうやって解決するか。私がこの時、Aさんにお話したのは、仏教の教えの中の「四摂法ししょうぼう」についてです。聞きなれない言葉だと思いますが、人との関わり方について説いた仏教の教えの一つです。「人付き合いの極意」ともいえるもので、四つの教えから構成されています。

一つ目の教えは「布施ふせ」。「お布施」はよく聞く言葉ですが、これは単に物をあげるということではなく、自分が学んだものを与えることも含みます。物質的、精神的に自分が得たものを人に分け与えよという意味です。

二つ目は「愛語あいご」。愛情がこもった優しい言葉を相手にかけましょうという意味です。

三つ目は「利行りぎょう」です。人は、行動を起こすときに何かしらの見返りを求めてしまうものですが、見返りを求めず相手のためになる行いをすることを指します。

四つ目は「同事どうじ」といって、相手の立場になって物事を考え、平等に行動しなさいという意味です。