1年半で「画期的な抹茶マシン」が完成

かくて塚田さんは、共同創業者となってくれた親友と共に、抹茶マシンをゼロから開発することになったのである。冷静に考えてみれば、コーヒーマシンに換わるような装置を作って全米に浸透させていこうというのだから、ずいぶんと大胆な発想である。

塚田さんは米国で活躍するデザイナーとエンジニアを引き合わせ、「抹茶の原料である碾茶てんちゃをミルで挽いて粉にして、濃い抹茶の液体を作る」というコンセプトを伝えてプロトタイプを作り上げると、創業からわずか1年半で、いままでこの世に存在したことのなかった抹茶マシン、「CUZEN MATCHA(空禅抹茶)」を完成させる。

「CUZEN MATCHA」のお試しセット(リーフ3種付き)は税込み2万9000円。
撮影=プレジデントオンライン編集部
「CUZEN MATCHA」のお試しセット(リーフ3種付き)は税込み2万9000円。

「機械の製造は、類似製品を作った経験のある会社に依頼するのが鉄則です。もちろん、深圳や台湾の会社に安く依頼する手もありましたけれど、抹茶は日本のものだから、やはりお茶の味わいに関する言葉がきちんと通じる日本企業に頼んだほうがいいと判断しました」

塚田さんの出資金は「50ドル」

創業資金とマシンの開発費はどうしたのか。自社でいきなり開発するには、相当な資金が必要ではないか。

「最初は僕が5で共同創業者が3という比率で出資して、会社を設立しました。その後、彼から約2000万円を会社に貸し付けてもらってマシン開発を進め、バリュエーションが約5億円に上がったところで、外部の投資家から約1億円を調達しました」

5:3の出資率の5とは、いったいいくらなのか。塚田さんは、あまり言いたくなさそうだった。

「シリコンバレーでの起業ではきわめてスタンダードなやり方ですが、実は僕が50ドルで、共同創業者が30ドルという出資額でした。しかし、いろいろな投資家から『いったいお前はいくら入れたんだ』って聞かれるので、さすがに50ドルとは言いにくいなと。株価が上がった段階で、追加で数百万円を入れましたが、決して大きな金額ではありません」

つまり、たとえ事業に失敗したとしても、塚田さんは自宅を失うこともなければ命を落とすこともないというわけだ。

こうして、塚田さんは2020年10月にまずは米国で「CUZEN MATCHA」を発売。翌2021年7月には日本でも販売を開始した。