穀物エネルギーの300~800倍の生産能力
藻類は、地球上最古の生物のひとつで、地球の大気をつくったと言われ、昆布やワカメなど大きなものから、湖沼などにいる微少な藻類まで含めると、これまで分類されたものだけでも約4万種類も存在しています。その中からいくつかの微細藻類をピックアップし、高温高圧で処理することによってバイオ原油を生産しようというのがわれわれの研究です。
昔から藻類が石油資源であったことはわかっていました。第1次石油ショックのときに、不安定な化石燃料に頼るばかりでなく、バイオ燃料を、ということで、アメリカのエネルギー省が「藻類からバイオ燃料を」というプロジェクトを立ち上げたのが始まりでした。
以来、盛衰はあるものの、各国で藻類バイオマスエネルギーの研究は続けられてきました。次世代エネルギーは太陽光、風力、水素、穀物バイオマスといろいろありますが、藻にはそのいずれに対してもある種の優位性があります。たとえば、トウモロコシのような穀物エネルギーに比べて、藻には300~800倍ものオイル生産能力があり、食糧危機に影響を及ぼすこともないわけです。あるいは低炭素の観点からも有益です。
下水での培養で課題の効率化を解決
私は、15年ほど前から、藻類によるバイオマスエネルギーの研究に傾注してきました。そして、5年ほど前にはすでに、藻類を原油化することには成功していました。その時点での課題は、藻から原油を効率的かつ経済的に生産し利用することであって、その点が世間からも疑問視されていました。培養面積の確保とコストの問題です。
培養に、かなりの面積が必要になることから、淡水を使って培養することは、水資源の枯渇問題がからんできます。また、燃料をつくるまでのプロセスで、つくる以上のエネルギーが必要になったら意味がなく、燃料生産においてエネルギー消費が少ないことは絶対でした。