2022年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年3月7日)
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は激化している。元外交官で作家の佐藤優さんは「モスクワの与党幹部から得た情報によると、ロシアのプーチン大統領はすでにウクライナ戦勝利を見据えて、アメリカがドイツと日本で行った戦後処理について深く研究している」という――。
天皇陛下とマッカーサー元帥の初会談(1945年9月27日、東京・アメリカ大使館にて)。写真=U.S. Army photographer Lt. Gaetano Faillace/PD US Army/Wikimedia Commons
天皇陛下とマッカーサー元帥の初会談(1945年9月27日、東京・アメリカ大使館にて)。写真=U.S. Army photographer Lt. Gaetano Faillace/PD US Army/Wikimedia Commons

ウクライナにおける戦闘は終局面に近づいてきた

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は激しさを増し、民間人にも多くの犠牲者を出しています。

しかしウクライナにおける戦闘は、終局面に近づいてきていると思います。

3月3日に行われたロシアとウクライナによる2回目の停戦協議で、攻撃にさらされる都市から民間人を脱出させるための退避ルート「人道回廊」を設置し、その間は一時的に周辺での戦闘を停止することで合意したからです。

人道回廊を作って民間人を逃がすということは、あとに残るのは軍人だけになりますから、最後まで戦い続けるというウクライナ側の意思表示であり、ロシア側もそれに応じるということです。つまり、戦闘が終局面に入ったことを示しているわけです。

もっとも実際には、3月7日現在、人道回廊は作られていません。実施される予定だった東部の都市マリウポリとボルノバハでは戦闘がやまず、延期になりました。ロシアもウクライナもその責任を相手に転嫁しています。このまま首都キエフや第二の都市ハリコフにロシア軍が突入すると多大な犠牲者が出ます。

ロシアとウクライナ、最終的に勝利するのは

すべての国連加盟国は武力行使に訴えてはいけないという国連憲章のルールを無視し、ウクライナに全面侵攻したロシアの行為は到底是認できるものではありません。ウクライナを国際社会が応援する気持ちは心情的によくわかりますし、ウクライナ軍も必死の抵抗を続けています。

しかし、残念ながらこの戦争はロシアが勝つことになるでしょう。

アメリカもヨーロッパ諸国もウクライナへの武器供与やロシアへの経済制裁は行っているものの、戦闘には参加していません。経済制裁にしても、国際的な銀行間の決済システム(SWIFT)からロシアの銀行を排除する際にも、ロシア銀行最大手のズベルバンクと国営ガス会社ガスプロム傘下のガスプロムバンクは含まれていません。ロシア産の石油・ガスに対する主要な決済手段となっているため、ヨーロッパは及び腰なのです。

また、ウクライナのゼレンスキー大統領は、民兵を募って銃を与えていますが、こうした即席の兵士は、プロの軍人の前では戦力にならず、圧倒的な軍事力の差を埋めることにはなりません。しかも銃や火炎瓶で武装した市民は民間人ではなく、戦闘員とみなされるので、ロシア軍の攻撃対象になります。