“赤字国家”への転落を防ぐラストチャンスだ
問題は、労働市場などの構造改革には時間がかかる。現金などの給付と異なり、有権者は政策の効果をただちに実感しづらい。だからといって先送りが続くと、改革を進めることは従来に増して難しくなる。その結果として、国際競争力の低下に直面する企業が増え、わが国の輸出が減少して経常収支が赤字に転落する展開も排除できない。より安価な労働力、豊富な需要を求めて海外進出を強化する企業も増えるだろう。
その結果として、ドイツやインドに追い抜かれ、わが国のGDPが世界第5位、さらに低い水準に下落する恐れも増す。逆の見方をすれば、一定の産業競争力が維持され、なおかつ、極東地域におけるわが国の重要性が高まっている状況は、構造改革を進める非常に重要なチャンスだ。この機を逃がせば次はないというくらいの強い覚悟をもって、岸田政権が小手先の対策ではなく、積年の課題である労働市場の改革に集中することが求められる。