【その1】そもそもマーケットは予測不能 

金融マーケットはトレンドも含め将来予測は困難であるケースがほとんどである。よって、「必ず儲かります、値上がりします」といった誘い文句はありえない。

人生そのものも予測不能だ。進学、就職、転職、結婚、引越、病気などを計画通りに進める者はまずいない。こうした予測できないライフイベントとマーケットの上に成り立つ金融商品を組み合わせた個人の資産運用はもともと非常に不安定なものにならざるをえない。

資産運用では長期計画が大事だが、同時に走りながらその都度考え即断即決する世界でもある。そうした一種の覚悟を持つことが投資をする上での前提となってくる。

右手はラップトップのキーボードに載せたまま、左手で持ったスマホでチャートの確認をする男性の手元
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【その2】リスクとリターンは表裏一体

金利リスク、クレジットリスク、為替リスク、流動性リスク、地政学リスク……マーケットには多様なリスクが存在する。リスクとリターンはトレードオフ(表裏一体)の関係であり、リスクを抑えてリターンを享受するのは、理想ではあるが虚構ともいえる。

ローリスク・ハイリターンとか、ローリスク・ミドルリターンとかいった「おいしい金融商品」は幻だ。リスクテイクをある程度認めてリターンを得る、ということになろう。

【その3】基準となる金利水準がある

大多数の個人投資家が、①②を理解しているのに詐欺的な商品に引っ掛かり、損害を被るのはなぜか。筆者は、資産運用において、③基準となる金利水準がある、ことをよく認識していないことが原因だと考えている。

これはマーケットにおけるベンチマークとなる指標のことだ。日経平均株価や為替、NY株式市場、原油価格などがこれにあたるが、こと資産運用において最も重要なのは、「長期金利の水準」だ。具体的には、日本国債10年債だ。日本銀行による金融緩和策が続いていることもあり、その水準は、0.25%(2022年11月1日)だ。この長期金利が、住宅ローンの金利や、定期預金の金利をはじめ、わが国の金融市場や投資市場、あらゆる経済社会活動の基準になっている。

ちなみに、長期金利などを基準にして経費などが差し引かれたメガバンクの定期金利は現在0.002%であり、全国銀行協会によると、運用のプロでもある全国銀行110行の有価証券運用利回りは、実は0.71%に過ぎない(2022年3月期)。

こうしたなか、冒頭に紹介した仕組債では、3カ月で5~7%もの利回りが提示されている。定期金利0.002%と比べれば、2500倍から3500倍だ。いかにハイリスク・ハイリターンかが明らかになる。