ダーウィンの進化論並みのインパクト
19世紀以降、生命科学の研究は、それまで宗教や人文社会科学の領域だと考えられていた分野に進出するようになりました。ダーウィンの進化論によって「神」の存在を前提とせずに生物の多様性を説明できるようになり、脳科学の進歩によって心の理解にも大きな進展がありました。そうして生命科学は、ヒトに関わる既存の学問、特に人文科学の分野に大きな影響を与えてきました。
一般にはまだそれほど認識はされていないかもしれませんが、近年の古代DNAの研究は、同じくらい大きなインパクトを考古学や歴史学、言語学の分野に与えており、さらには「人間とは何か」という巨大な問いにも新たな答えをもたらそうとしているのです。
いうまでもなく、そのほとんどは現在進行形で研究が進んでいるものです。研究のさらなる進展にしたがって、異なる結論が導き出されることもあるかもしれません。それでも、現時点で何が明らかになっており、古代DNA研究が何を目指しているのかを学ぶことで、この研究の行き着く先を見通すことができるはずです。