※本稿は、廣瀬敬『地球を掘りすすむと何があるか』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。
東京の地面の30キロ下にマントルがある
私たちの足元にある地面、たいてい、これはまだ地殻と呼ばれる部分ではありません。土壌と呼ばれる、風化した岩石が細かい粒子となって堆積した層です。土壌は生物の死骸や排泄物などが供給する有機物を含み、微生物がすみつき、植物に栄養を供給しています。
この土壌を掘りすすむと、やがて硬い岩石層に到達します。これが地殻です。
地殻の厚さは6~30キロメートルですが、これは主に大陸地殻か海洋地殻かで大きく異なります。大陸地殻は世界中ほぼどこへいっても、およそ30キロあります。
ちなみに、島国である日本はどちらなのかというと、大陸地殻です。そういうと、意外に思う方もいるかもしれませんが、じつは日本列島はつい最近まで大陸の一部でした。つい最近といってもおよそ2000万年前の話ですが、それ以前は中国や韓国あたりにペタッとくっついた大陸の一部だったのです。最近ようやく分かれましたが、地殻としては大陸の一部。だから東京の下を掘っていくと、マントルまで30キロあります。
日本列島の地質帯で、もっとも古いものは約5億年前のものです。そのうちの2000万年なので、やはり地球のタイムスケールでは、日本列島が“独立”したのは最近といっていいでしょう。
人類は地下12キロまでしか到達できていない
月まで到達できた人類ですが、ボーリングで到達した最深記録は地下12キロです。その場所はロシア北西部、フィンランドとの国境に近いコラ半島というところです。目的は科学掘削、地下深く掘っていくと何があるのかという、純粋に科学目的のために掘削がおこなわれました。1970年に掘り始めて、じつに20年ほどかけて1万2262メートルに達しています。
しかし掘削はここで頓挫。原因は高温です。
地球の中身はドロドロと思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。ただ、ドロドロではなくても掘りすすむほど高温になります。だいたい1キロメートル掘りすすむごとに30℃上昇というのが平均的なペースですが、もちろん場所によって異なります。熱源が近ければそれだけ高温になるのもはやくなるはずで、そういう意味では、海の底のほうが熱いマントルに近いので、はやく熱くなります。
高温になると何が問題かというと、掘削をおこなうドリルが使い物にならなくなってしまうのです。ドリルの先端の刃の部分にはダイヤモンドを使っています。ダイヤモンドは人類が知るもっとも硬い物質ですが、じつは熱に弱いのです。