人はなぜ働きすぎてしまうのか。精神科医のアンナ・レンブケさんは「仕事であっても深い集中に入ると脳からドーパミンが放出され、高揚状態を作り出す。構造的にはスカイダイビングやバンジージャンプなどと同じだ」という――。

※本稿は、アンナ・レンブケ『ドーパミン中毒』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

エクストリーム・スポーツは依存性がある

エクストリーム・スポーツと呼ばれるスポーツがある。スカイダイビングやカイトサーフィン、ハンググライダー、ボブスレー、ダウンヒルスキー/スノーボード、滝で行うカヤック、アイスクライミング、マウンテンバイク、キャニオンスイング、バンジージャンプ、ベースジャンピング、ウィングスーツ飛行などだ。これらは快楽と苦痛のシーソーを苦痛の側に思い切り、素早く押す行為だ。強烈な苦痛/恐怖にアドレナリンを1ショット加えると強力なドラッグとなる。

パラシュート
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科学者たちはストレスだけで脳の報酬回路のドーパミン放出が増加し、コカインやメタンフェタミンなど依存性の薬物で見られるのと同じ脳の変化が作り出されることを明らかにしている。

快楽の刺激に繰り返し晒されることで耐性がつくように、痛みを感じる刺激にも耐性がつき、脳のシーソーが苦痛の側にリセットされる。

スカイダイバーと対照群(ボート選手)を比較した研究で、スカイダイビングを繰り返しやってきた人はその後の人生で無快感症、すなわち喜びの欠落を経験することが多くなることがわかっている。

この研究者たちは、「スカイダイビングは依存症行動と類似しており、“ナチュラルハイ”体験を頻繁にすることで無快感症になっている」と書いている。高度4000mで飛行機から飛び降りることが私には「ナチュラルハイ」になることとは思えないが、全体的な結論には同意する。つまり、スカイダイビングには依存性があり、繰り返し行えば気分不調に陥り、抜け出せなくなる可能性があるということだ。