1テーマ1ページで思考の流れを整理

200万円、500万円の講演、30分、1時間半の講演でも1枚に集約/1枚のメモに、考え方の流れを整理する。気合を入れて、集中してばっと書き出すことがポイント。メモを書くことが、自分の頭を整理する作業だと大前氏は言う。忘れてはいけないイグザンプルや数字などを書いておき、講演などで即興で話すのだ。

私にとってノート術というのは他人の話を書き留めるためのものではない。あくまで自分の思考を整理するためのものである。

たとえば差し迫った講演やミーティングがあるときには、早朝の1~2時間デスクに向かって、時には風呂場やトイレで、あるいは行きがけのクルマの中で、気合を入れて今日の話の内容を考える。相手がどんな話を聞きたがっているのかを想定しながら、こちらとして言っておかなければいけないことをメモにパパパッと書き出していく。

何か一つのテーマに関して、頭の中にあるデータを取り揃えて一つの考え方の塊にする。

「結論はこう。その理由はこれ、これ、これ、3つある」というピラミッド思考が瞬間的にできるように訓練してきたから、テーマが決まればすぐに書き出すものが湧き出てくる。

最終的な結論は何か。その結論を導き出すための論拠、そしてイグザンプルは何か。キーワードや数字、簡潔なセンテンスを交えて書き並べていく。日本語で話をする場合には日本語で、英語で話をする場合には英語で。ちなみに私は昔から縦書きだと頭が働かない。すべて横書きだ。

思考の流れを整理するのが目的だから、思いつくままにだらだらと何枚も書き連ねたりしない。基本的には1テーマ1ページ。1枚のメモに思考の塊をパッケージする。

200万円の講演でも500万円の講演でも、30分の講演でも1時間半の講演でもすべて同じだ。1枚のメモで事足りる。それで、話が始まってみればいかにもその場で思いついたように話をする。

実際、メモは手元に置いているが、ほとんど目を落とすことはない。一度話し始めれば、芋の地下茎のように考え方の塊がつながっているから、聴衆から目を離さずとも話が自然に流れてゆく。

記憶でも記録でもない。要するに頭の中を整理するためにメモするのであって、集中してメモを書いた時点で目的は十分に達している。だからしばらく経ってから講演メモを読み返しても、何が書いてあるのかさっぱりわからなかったりするのだ。

※すべて雑誌掲載当時

(小川 剛=構成 的野弘路=撮影)