日本は潤沢な対外純資産がある

【森永】ここでまた日本のことを考えてみましょう。日本の経済成長は25年も停滞していますが、それでもGDP500兆円以上のモノやサービスの生産能力を有する、世界3位の経済大国です。日本政府が発行する国債は毎年大部分を民間銀行が購入していますし、政府支出も国内の事業者がモノやサービスを生産することで概ね完結しています。もちろん食糧や石油などのエネルギーは輸入に頼らざるを得ませんが、日本国民の需要は概ね日本国内の行政や民間企業で満たすことができています。

【中村】この状況なら、外貨建て国債を発行する必要もないということでしょうか?

【森永】その通りです。

【中村】でも森永先生、エネルギーや食糧は輸入に頼っているわけですから、そこで外貨建て国債は必要ないのでしょうか?

【森永】今のところ必要ありません。日本は潤沢な外貨準備と対外純資産を持っているため、外貨建て国債を発行しなくても、輸入の際に問題なく支払いを行うことができます。

【中村】外貨準備……対外純資産……。

【森永】要は、外貨建て国債に頼らなくとも、外国貨幣を豊富に持っているということです。中村くんも海外旅行の経験があるようですが、日本製の自家用車が外国で走っているのを見かけませんでしたか? あれは貿易によって日本の自動車会社から外国へ輸出しているのですが、企業が得た外貨は、どこかのタイミングで日本円に両替されます。両替のタイミングで、政府や日本銀行が外貨を手に入れるというわけです。

日本の対外純資産は約356兆円

【中村】なるほど、そういうことなんですね。ちなみに日本にはどれくらいの外貨があるのでしょうか?

【森永】財務省の発表によると、2021年5月25日時点で日本の対外純資産は356兆9700億円2022年3月7日時点で外貨準備は1兆3845億7300万ドルです。日本のモノやサービスを海外に販売することによってこれだけのお金を稼ぐ力があるので、外国から食糧やエネルギーを購入する際も、外貨建て国債を発行する必要はない、ということですね。

なお「対外純資産」とは、外国に対して負っている債務(負債)と、外国に対して持っている債権(資産)との差額です。例えばアメリカに対して10兆円の債務を負っていても、イギリスに対して20兆円の債権を持っていれば、対外純資産は10兆円となります。なお、「純資産」の中には土地や建造物などの有形資産も含まれます。つまり、日本の対外純資産が356兆円だからといって、356兆円分の外貨を持っているわけではない、ということですね。