1ドル360円という価値の根拠が失われた

【中村】でもそれでなぜ、日本が変動為替相場制に移行しなければならないのでしょうか?

森永康平『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』(技術評論社)
森永康平『「国の借金は問題ない」って本当ですか?』(技術評論社)

【森永】ニクソンショックによって、日本だけでなく世界中が変動相場制に移行したのです。変動為替相場制とは、当該国間の経済状況によって、その国の通貨の価値が変動する制度のことです。ドルは金という裏付けを失ったため、1ドル360円という価値の根拠を失い、世界中で変動為替相場制に移らざるを得なかった、ということですね。

【中村】なるほど、そういうことなんですね。

【森永】変動為替相場制を採用できているということは、MMTを考える上で非常に重要です。なぜなら固定為替相場制では、自国通貨の価値を保つために、レバノンのように外貨建て国債を発行する必要があるからです。自国通貨を運用しながら外貨建て国債を発行していれば、それを税金などで返済する必要がありますから、MMTの考え方の外にあることになります。実際にレバノン以外にも、自国通貨を運用しながら外貨建て国債の返済や利払いができずに財政破綻を起こした国は多数あります。

【中村】あ、そうなんですか。

【森永】例えば1998年のロシアです。ロシアは直近でもウクライナ侵攻により外貨資産が凍結され、ロシアの主要銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されたことで、ドル建て国債が債務不履行となりました。しかし実は過去にも同じようにドル建て国債が破綻しています。これは当時のロシアが「ドルペッグ制」という実質的な固定為替相場制を採用していたためです。図表1は、財政破綻した国とその理由を簡単にまとめたものです。どの国も日本とは状況がまったく違うことがわかりますね。

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