1ドル=144円99銭まで円安が進行

8月下旬以降、外国為替相場ではドル高・円安が急速に進んだ。9月7日には1ドル=144円99銭まで円安が進行した。その要因として、8月25~27日に開催された“ジャクソンホール会合(米カンザスシティー連邦準備銀行主催の経済政策シンポジウム)”における日米金融当局者の講演によって、両国の金融政策の違いが鮮明化したことは大きかった。

経済財政諮問会議に臨む日本銀行の黒田東彦総裁=2022年9月14日、首相官邸
写真=時事通信フォト
経済財政諮問会議に臨む日本銀行の黒田東彦総裁=2022年9月14日、首相官邸

それは、投機筋などにドル買い・円売りのオペレーションを行う安心感を与えた。ジャクソンホール会合以降、ヘッジファンドなどの投機筋は円安の進行を狙い撃ちしてドル買い・円売りのポジションを急速に増やした。

今後の展開を予想すると、短期的に一段と円安が進む可能性はある。それによって輸入物価はさらに上昇するなど、わが国家計の生活の厳しさは増すだろう。やや長めの目線で考えると、徐々に円売りポジションは巻き戻されるだろう。投機筋は買ったものは売り、売った物は買い戻す。そのきっかけになると考えられるのは、米国株の急落や、日銀総裁人事後のわが国金融政策の調整などだ。

会合で日米の金融政策の差が浮き彫りに

8月下旬以降に急速に円安が進んだ要因として、ジャクソンホール会合のインパクトは大きかった。最も重要なことは、一連の講演や討論会を通して、日米の金融政策の差が一段と鮮明になったことだ。米国の金融政策は引き締められ、金利は上昇するだろう。その一方で、当面、日銀は異次元の金融緩和を継続し、わが国の低金利環境が続く。その結果として日米の金利差は一段と拡大すると考える投資家は急速に増えた。

ジャクソンホール会合にて、複数のFRB関係者が金融引き締めを急がなければならないとの危機感を示した。8月25日、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、利上げは前倒しで行うべきだと述べた。翌26日の講演にてパウエル議長は、成長率の鈍化などの痛みを伴ったとしても利上げを続けなければならないと、より強い危機感を表明した。