国産レモン発祥の地で日本酒の新ブランドを
そもそも三宅が瀬戸内海の諸島部で創業した理由は何だったのか。レモンである。
広島県は国内生産量で50%以上のシェアを握り、断トツで日本一のレモン産地。とりわけレモン栽培に適しているといわれているのが日当たりの良い諸島部だ。「瀬戸田レモン」のしまなみ海道・生口島と並び、「大長レモン」のとびしま海道・大崎下島は「国産レモン発祥の地」と呼ばれている。
日本酒ビジネスで地域に根差した新たなブランドを確立したい――これが三宅のビジョンだ。出身地である広島の特色を生かすとなれば、必然的に日本酒にレモンを掛け合わせて新ブランドを立ち上げるという展開になる。
ここから生まれたのが2016年発売のミカドレモンだ。ナオライにとっての第1作。広島産の純米大吟醸――日本酒の最高峰――をベースにして三角島産のオーガニックレモンを掛け合わせたスパークリング酒である。
1本当たり6000円を超える高級酒であるだけに、レモンの皮をあしらったボトルデザインも斬新だ。発売翌年に国際コンペティション「ペントアワード」で銀賞を受賞している。ペントアワードはパッケージデザインに特化したコンペとして世界最高峰であり、本部はロンドンにある。
担当デザイナーの名前を聞けば納得する人も多いのではないか。有力デザイン事務所「NOSIGNER(ノザイナー)」を率いる太刀川英輔なのだ。彼の著書『進化思考』(祥伝社)は昨年に発売され、ベストセラーになっている。
昨年には浄酎のボトル――はやりNOSIGNERがデザイン――がペントアワード銀賞に輝いている。
「オーガニックレモンバレー」構想
ナオライが持つレモン畑は三角島に加えて、対岸にある大崎下島の久比地区にまで広がっている。
将来的にはナオライ創業者は久比一帯――行政区分上は三角島も久比――を「オーガニックレモンバレー」にすることを夢見ている。「広島はレモンの産地として日本でナンバーワン。だから広島産レモンを使って新しい地域ブランドをつくりたい」
瀬戸内海の諸島部にはレモン栽培に適した場所は多い。その中で三角島がナオライの創業地となったのは偶然が重なった結果である。