感知・捕捉・変革を自らに与えるエマージェンス思考
私たちビジネスパーソンは、これまでPDCAの世界を生きてきました。ですから、プラニング思考については、自らの方法をすでに持っている方が多いと思います。
ただし、エマージェンス思考については、コレといった正攻法はなかなかありません。なんといっても“エマ―ジェンス”ですから仕方ない。そこで紹介するのが、SSTというプロセスです。
SSTというのは私の造語です。次の三つの言葉の頭文字です。
・S(Seizing)=捕捉する
・T(Transforming)=変革する
もうお気づきですね。明らかにPDCAとは異なる“ボトムズアップ”のアプローチです。
SSTの出どころは、ダイナミック・ケイパビリティという経営学の分野です。デイヴィッド・ティース(1948~)というアメリカの経営学者が示した企業変革の概念に基づき、編み出しました。
簡単に説明します。
ダイナミック・ケイパビリティとは、自己変革能力のこと。言い換えれば、臨機応変に自分を変えていく力です。現在、ダイナミック・ケイパビリティの研究者たちは、組織の能力に焦点を当て、環境変化に合わせて事業を変えていく企業力の実態を明らかにしようとしています。つまり、能力を変えるためのメタ能力の研究です。
いつもより少し意識的にSSTの行動を起こすことで可能性は広がる
具体的にどうすればいいのでしょうか。
さほど難しいことではありません。PDCAに偏重した私たちにとっては、むしろ実行しやすいことです。日常生活の中で、いつもより少し意識的に、SSTの行動を起こしていけばいいだけです。(図表1)
1週間に1回でも、1カ月に1度でもいいです。これまでとは異なる何かを試してみるのです。
普段行かない街に足を延ばす。いつも降りない駅に降りてみる。初めてのレストランに入る。知らなかったジャンルの本を読んでみる。ボランティアに参加してみる。何だっていいのです。
それらを感知し、捕捉し、変革する。
新しい未来が創発してくる可能性が、そこから次第に広がります。