2022年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年5月10日)
なぜ若者のテレビ離れが進んでいるのか。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道さんは「テレビ業界全体がコンプライアンスを意識しすぎるようになり、番組作りが萎縮している。BPOの番組審議のあり方を考え直さなければ、もうテレビから面白いバラエティー番組が出てくることはないだろう」という――。
コンプライアンスを逆手に取った「水曜日のダウンタウン」の好企画
4月27日放送のバラエティー番組「水曜日のダウンタウン」(TBS系)を見て思わず涙が出た。
その日の企画は「若手芸人、コンプライアンスでがんじがらめにされても従わざるを得ない説」の検証。「罰ゲーム」「下ネタ」「コロナ対策」「反社+α」という4つのテーマに応じて、不条理な自主規制について若手芸人の反応を試した。
このうち、お笑いコンビ・そいつどいつは、架空の番組「商店街ウォーカー」のロケとして、商店街の店員に「反社ではないですよね?」と確認させられたり、街を歩く際に「番組のスポンサー企業ではない自動販売機を隠しながら歩いてくれ」と頼まれたりする。そして鯛焼き店での試食では「頭から食べると残酷」「中身のあんこが残酷に見えるかもしれない」などと言われる。そいつどいつは、当初はスタッフの指示に従うが、最後には「これでは面白い番組にならない」と正面から反論するようになる。
私はよくできたドキュメンタリー番組だと思った。「水曜日のダウンタウン」のセンスによって見事にお笑いに昇華されていたものの、まさに今テレビマンたちが置かれている「番組の作りづらさ」を皮肉っているからだ。
思わず仲間のテレビマンたちとこの番組について話をした。やはり仲間たちも同じように感じていた。「これは明らかにBPO(放送倫理・番組向上機構)に対する悲痛な抗議の叫びだろう」「頑張れ! 水曜日のダウンタウン」などという声がテレビマンたちから上がった。
そう、近年バラエティー番組を作ることは、あまりにも不自由な作業となってしまった。