2022年上半期(1月~6月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年6月17日)
河川敷やイベント会場にある仮設トイレは、溜まった排泄物を定期的に汲み取る必要がある。一体どうやって処理しているのか。屎尿処理のアルバイトに応募し、実際に働いた『裏モノJAPAN』編集部の野村竜二さんがリポートする――。

※本稿は、野村竜二『潜入ルポ 経験学歴不問の職場で働いてみた』(鉄人社)の一部を再編集したものです。

仮設トイレ
写真=iStock.com/marcduf
※写真はイメージです

「意外と希望者が多くて空きが無いバイト」

今回も新たな仕事に挑戦するため、ネットの求人サイトを開いた。

前回はゴミ収集をやったので、さらにキツそうな仕事の代表格、バキュームカーの作業員はどうだろう。ボットン便所のウンコを片づけるなんて、想像しただけで鳥肌が立つぞ。

よし、今回はウンコをバキュームで吸い込んで稼いでやる。さっそく、求人を探さなくっちゃ!

求人サイトを眺めてわかったのだが、バキュームカーの仕事は、浄化槽清掃や、し尿処理といった名前で募集がかけられているようだ。

それらのキーワードを入力して検索をかけてみる。いくつかの求人は見つかったのだが、その全てが東北や九州などの地方の募集ばかりで、関東近郊の求人は見当たらない。たしかに都内でバキュームカーが走ってるところなんてほとんど見たことないもんな。

その後もサイトを巡回していたら、気になるページを発見。見出しには「意外と希望者が多くて空きが無いバキュームカーバイト」と書かれている。

サイトによればバキュームの仕事は楽なうえに高給なので、募集がスグに埋まってしまうとのこと。うーむ。それほど人気の職種だったとは。

その後も懸命に探すこと数日。ようやくジモティーの仕事募集で東京都足立区で行われる浄化槽清掃の仕事を発見した。すぐ連絡をして、面接の約束に成功。あー、よかった。

なかなかの好待遇じゃん!

面接当日。上野駅の近くにあるカフェで待ち合わせることになった。

コーヒーを飲みながら待っていると、約束の時間から10分ほど経ってから、作業着姿のオッサンが現れた。この人が面接官のようだ。

「あー、遅くなってごめんなさいねー。田中といいます」
「野村と申します。よろしくお願いします」
「さっそくなんだけど、週に何回くらい出れそう?」

いきなりシフトの相談かよ。

「はい。毎日出れます。なんなら明日からでも!」
「はい。わかりました。時給が1200円。1カ月の研修中は1100円だけど大丈夫かな?」

給料も悪くない。なかなかの好待遇じゃん! これは確かに人気が出そうだ。

「ちなみに野村君はこの仕事の経験はあるのかな?」

経験どころか、浄化槽がなにかすら知らない門外漢だ。大丈夫かなあ。

「いえ、未経験です」
「じゃあ、どんなイメージを持ってるか教えてくれる?」
「バキュームでウンコを吸い取るってことくらいしか……。勉強不足ですみません」
「ははは、まあ大丈夫。その辺りはヤル気でカバーしてよ」

よかった。未経験だからといって不採用になるわけじゃないみたいだ。