メインの仕事は、浄化槽の清掃と仮設トイレの汲み取り

「それじゃあ、詳しい業務内容を説明していくよ。まず、うちは依頼があったところにバキュームカーを派遣する会社なのね」
「はあ……」
「最近は汲み取り式の家は少ないから、ウチでは取り扱ってないんだよ」

ボットン便所とよばれる汲み取り式トイレに住む人は、東京都内には奥多摩などの田舎を除いて、ほとんどいないらしい。実物を見てみたかったので期待してたのだが、ちょっとガッカリだ。

「その代わり、浄化槽の清掃か仮設トイレの汲み取りがメインの仕事になるから」

浄化槽とは一般家庭で糞尿を下水道に流す前に溜めておくタンクのことだそうな。この中で微生物が糞尿を分解するのだが、定期検査が必須で、中にゴミや異物が溜まるとそれを吸い出さなくてはいけないらしい。この検査も業務に含まれているとのこと。

もう一つの仮設トイレというのは、工事現場やイベントなんかでよく見るアレだ。基本的には仮設トイレのレンタル業者がトイレの回収と一緒に中身の糞尿も処理するのだが、長期間の工事になると、この会社からバキュームカーが出動して、糞尿を回収するとのこと。

ドアが開いた仮設トイレ
写真=iStock.com/Luca Piccini Basile
※写真はイメージです

以上が、この会社が請け負う仕事だ。いずれにせよウンコと付き合うのは確定である。

「とりあえず、一通りの説明は以上かな。何か質問はある?」

最大の懸念材料であるニオイについて聞いておかなくては。

「クサすぎて吐いちゃう人もいたから」

「あのう、やっぱり糞尿のニオイって強烈なんでしょうか?」
「うーん、まあ人それぞれだけど、ダメな人は本当にダメだね。クサすぎて吐いちゃう人もいたから」

なんだって! ゲロ吐くほどってどんだけだよ!

「入社初日の昼食後にね。あまりにも強烈だったみたい。でも、その人は今でも働いてるから笑い話だよね」

いやいや、全然笑えねえよ。

「実際に働いてもらうときは、先輩に色々聞きながらやっていけばいいからさ。とりあえずやってみればいいよ」
「はい。わかりました」
「ただ、ドライバーさんは独立独歩の人が多いから、なるべく失礼がないようにしてね」

言葉は濁してるけど、要するにジコチューってことだよな。やっぱりこの手の現場仕事は頑固な人が多いのだろう。うーん、不安が残るけど、その強烈なニオイってのには興味が出てきた。ちょっと味わってみたいかも。俺、ニオイフェチだし。

「じゃあ、とりあえず採用ってことで。来週の月曜日から出社してくれるかな?」
「わかりました」
「朝の7時30分に事務所に来てくれてればいいからさ。よろしくね」

そう言い残してカフェを出ていった。にしても飲食店でするような面接の内容じゃなかったな。

ま、無事に採用になったことだしここまで来たらやるしかない。どんなにニオイがキツくても我慢するぞ。