新型クラウン「クロスオーバー」モデルが9月1日に発売された。グローバル展開するトヨタの世界戦略車として一新され、発表時に大きな話題と期待を集めた新型車は果たして成功するか。自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明さんは「ヒット作になると考えていたが、クロスオーバーの実車に触れて“大きな課題”に気づいた。ライバルはハリアー、NX、RX、そして新型クラウン別モデルとなり、かなり厳しい戦いが予想される」という──。
ついに発売された新型クラウン
7月に発表された新型クラウンが、一部グレードのみとはいえ9月1日に発売となった。新型クラウンは今までのクラウンとはまったく異なる佇まいのスタイルとなり、来年には4つの車型を持つ、カローラのような大きな車種ブランドに成長する。
今回発売されたのは「クロスオーバー」と呼ばれるモデルで、新型クラウン開発の中核的なモデルである。また新型クラウンは今までと異なり、グローバル展開されることもトピックである。
このクラウン・クロスオーバー、今までの、よくいえばフォーマル、実際には非常に保守的なモデルだったクラウンのイメージを刷新するパワーを持った魅力的なモデルというのが第一印象だった。最近ドイツのプレミアムブランドが力を入れている、「クーペSUV」にも通じるスタイリッシュさが感じられたのだ。
クラウンというブランドにふさわしいかどうかはさておき、若者にも支持されヒット作になるだろうと直観的に感じた。
SUVのようで、使い勝手は大きく異なる
しかしスタイリングを子細に見た後に、実際に車に乗り込んで使い勝手をチェックしている過程で、おや? と思い始めてしまったのである。
この車は、一見するとSUVのように見えるのだが、使い勝手的には今までのクラウン・セダンとほとんど変わらないのだ。
どういうことかというと、このモデルにはハッチゲートがなく、小ぶりなトランクリッドがあるだけで、荷物はそこからしか出し入れできないのである。リアシートのアームレスト部分にトランクと通じる穴はあり、スキーなどの細長い物は積めるが、リアシートは固定式で畳むことはできず、トランクに収まらない大きな荷物を積むことは不可能なのである。
なぜそれが問題なのか。
その疑問に答えるためには、なぜ高級車においてもセダンの人気が衰え、SUVがこれほどの人気になったのかを考える必要がある。