「使い勝手」と「ステータス」の両立

ついにプレミアムブランドは、ファミリーカーとして使い勝手のいい5ドアハッチバックを、「SUV」という名の下に、ステータス感を損なわずに手に入れることに成功したのだ。

このことからわかるように、「高級車なのに便利な5ドアハッチバック」であることがSUVの大きな存在意義だ。となれば、当然の成り行きとしてSUVはまたたく間にプレミアムブランドにおいてメジャーな車型となっていった。

2002年にはポルシェも参入し、メルセデスベンツやアウディは言うに及ばず、ロールスロイスやベントレーまでSUVをラインアップに加えるようになった。

これらの高級SUVに共通しているのは、すべて使い勝手のいい5ドアハッチバックであり、荷室も大きく使いやすく、セダンにはない多用途性を持っていることだ。現在ではレクサスの65%、ポルシェの56%、BMWの46%、ベントレーの40%をSUVが占めるに至っている(2021年)。

SUVが高級車として認められているという象徴的な出来事として、先日行われたエリザベス女王の国葬がある。王族や要人の乗る車列の中にレンジローバーやロールスロイス・カリナンといったSUVが多く見受けられたのだ。天皇皇后両陛下の空港からの送迎車としてもレンジローバーが使われていた。

新型クラウンのラゲージスペース
写真提供=トヨタ自動車
新型クラウン・クロスオーバーのラゲージスペース

自社車種に多くのライバルが…

ひるがえって、新型クラウンは一見スタイリッシュなSUV風であるが、前述の通り使い勝手はあくまでセダンなのである。

もちろん、多用途性を求めず、SUV的なスタイリングだけを求める客もいるだろうが、多くの選択肢がある中であえてクラウン・クロスオーバーを選ぶ意味はあるだろうか。

トヨタ内にもハリアーという上質感と多用途性を兼ね備えたモデルがある。レクサスにもクラウン・クロスオーバーと近い価格帯にNXという魅力的なSUVがある。

NXはクラウン・クロスオーバーよりややサイズが小さいが、リアシートは通常用途としては十分以上の快適性があり、荷室もクラウンの450Lに対して後席を畳まなくても520Lあるうえ、荷物の出し入れも圧倒的にやりやすい。年末にはサイズ的にも近いレクサスRXもモデルチェンジし、新型となる(ただし価格はクラウンより高価になると考えられる)。

ハリアー、レクサスNX/RXはすべて使い勝手のいい5ドアで、当然リアシートを畳むことができるし、リアシートのリクライニングも可能だ。クラウンのリアシートは固定式でリクライニングもできない(最上級モデルにのみオプションでリアリクライニングシートを選択可能)。