ライフスタイルの変化で人気車種は変わる

乗用車の世界ではCセグメント(フォルクスワーゲン・ゴルフ、トヨタ・カローラクラス)までは5ドアハッチバックが主流となり、Dセグメント(トヨタ・カムリ、フォルクスワーゲン・パサートクラス)以上では3ボックスのセダンがメイン、という時代が長く続いた。

Cセグメントまでは実用性重視だが、Dセグメント以上ではステータス感や上質感が求められていたからだろうと思われる。

実用性を求める層がなぜ5ドアハッチバックを好んだのか。それは、1980年代頃からIKEAなどの郊外型の大型店舗が増え始め、車で大きな荷物を運ぶ場面が増えたからである。またレジャーも多様化して、荷室の使い勝手の重要度は増していった。

ハッチバックであれば後席を畳んで大きな荷物を積むのは容易であるが、3ボックスセダンではかさばる荷物を積むのは困難だ。Cセグメントにおいて3ボックスセダンの売り上げが世界的に低下傾向をたどったのは、このようなライフスタイルの変化が大きいと考えられる。

プレミアムブランドの顧客がSUVに飛びついた理由

SUVの原型は、オフロードをメインに走るクロスカントリー型の4WDであり、大きく高価なモデルが多かったため、もともとステータス性は高かった。しかし乗り心地は粗野で騒音も激しく、一般的な用途には向かなかった。

ところが、1990年代になって乗用車をベースとした、快適性の高いオンロード指向のSUVが登場すると状況は一変する。

プレミアムブランドの顧客層、つまり富裕層でもライフスタイルの変化は起きており、潜在的にマルチパーパス車のニーズは高まっていたのだ。しかし普通の5ドアハッチバックでは大衆車イメージが強すぎて、ステータス性が必要なプレミアムブランドにはふさわしくない。

ステーションワゴンやミニバンも同様にファミリーカーイメージが強すぎる。そのような状況の中で、快適性の高い新世代のSUVはプレミアムブランドにもふさわしい車型として世の中に受け入れられたのである。