自衛隊では背の高い者が最前方に並ぶ方式

ちなみに実際、背の順の原型は軍隊にあるが、これは背の高い者が最前方に並ぶ方式である。その方が前の台に立つ上官から見て、見栄えがいいという理由を自衛官の方から直接聞いたことがある。かつての、「気を付け!」「前へ~、ならえ!」の号令とともに全員が直立不動で話を聞き続けなければならない全校朝会の風景と、ぴたりと重なるものがある。

それでも「並び方を単一に固定するなら、逆に背の順一択でもいいじゃないか」という声が聞こえそうである。しかし、そうはいかず、身体計測のように名簿の番号順に並ぶ機会が実際にかなりある。そして何より、背の順の最大の欠点は成長の過程で順序が変動することで、混乱が生じるという点である。特に緊急避難時などの頭が混乱しやすい時には、年間通して同じ順番の方がとっさに動きやすく合理的である。

また順序が変動するという要素は、自分の方が相手より大きいとか小さいとかいう比較からの無駄な序列争いにもつながる。

松尾英明『不親切教師のススメ』(さくら社)
松尾英明『不親切教師のススメ』(さくら社)

これらのことをまとめて考えると、背の順をやめることは、子どもの主体性向上につながる。なぜならば、無思考に不条理に従うという悪習を脱し、人権について真剣に考え、見直すきっかけとなるからである。

さらに、教師の仕事量の軽減にもつながる。年度の途中でいちいち比較と並び替えをしなくて済む上に、余計なトラブルへの指導も減るのだから、一石二鳥以上の大きなメリットである。

こういった大事なことは、全校で確認すべきことである。前任校では、校長に確認し、職員会議でも話題に挙げて「確かに必要ない」と言われてから、完全に背の順をやめた。必要ない、むしろ害悪が大きいという共通認識をもつ必要のある慣習の一つである。

これを読んで納得された方は、早速ぜひ自校でもトライをしていただきたい。それによって救われる子どもが大量に出ること請け合いである。

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