避難訓練から保健関係まで、整列は「名簿順」でいい

ここに大きな誤りと盲点がある。

背の低い子どもは、周りに比べて自分の背が低いという身体的コンプレックスを抱えている可能性が高い。しかし、背の順に並ぶことが学校で何の疑問もなく当たり前とされているからには、そこに異議を唱えることなど、考えられない。常に列の先頭に立ちながら、自分の背が低いことをそのたびに再認識させられることになる。

子供の成長をうれしそうに自宅に刻む両親
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背の順に並ばせることに限らず、学校生活におけるあらゆる決め事については、教師の側に大きな権限と責任がある。にもかかわらず、これが問題とされてこなかったことの根本には「人権意識」の欠如がある。「大した問題じゃない」「気にし過ぎ」という意見は、立場の弱い者の視点が明らかに欠けている。

「背の順」を廃止した方がよいもう一つの理由が、先にも書いた通り年間を通しての並び方を単一に固定するためである。並び方が複数あると、特に緊急時に混乱するというのが大きなデメリットである。

実際、避難訓練から保健関係まで、整列はすべて「名簿順」で事足りる。さらに、避難時には名簿順で年間固定されている方が混乱することなく素早く並べて、避難後にも名簿で確認できるため「○○さんがいない」事態を圧倒的に把握しやすく、合理的である。これが会議等で並び方を単一化したいという提案をする際に、一番に挙げる理由である。学校においては、人権という視点以上に、安全上の問題という方が重要事項として扱ってもらいやすいからである。

たぶん、炎天下でも全員が外に整列して立ったまま朝礼台からの話を聞く「全校朝会」では、台上から全員の顔がよく見える背の順での都合が多少なりともよかったのである。それくらいしか「背の順」が適当な理由が思い当たらない。