アメリカ・イスラエルとイランの戦争はこれからどうなるのか。米軍がカーグ島を占領しても、本土決戦に持ち込んでも、イランは降参しないという。なぜ、トランプ大統領は泥沼から抜け出せないのか。拓殖大学海外事情研究所准教授の野村明史さんが解説する――。

アメリカとイランが送り合う「無理難題」

アメリカの対イラン軍事攻撃から約1カ月、事態はいまだ終結の兆しが見えない。当初3月31日から予定していたトランプ大統領の訪中も、5月中旬へ先送りされることがホワイトハウスから発表された。

戦争は早期に終結するとの青写真を描いていたトランプ大統領。対中戦略や国内での求心力回復に注力するためにも、イランとは早々に決着をつけたいという焦りに駆られている。

3月24日、トランプ大統領はパキスタンの仲介を通して、イランに15項目の停戦計画案を提示した。停戦計画案では、主要核施設の解体または大幅な無力化、ウラン濃縮の停止、保有する濃縮ウランの国外搬出・除去、弾道ミサイル計画の制限または放棄、ヒズボラやフーシ派、ハマスなど代理勢力への支援停止、ホルムズ海峡の全面的な開放などをイランへ要求した。

これらに対する見返りとして、アメリカは核関連制裁の緩和と民生用核エネルギー計画への監督付き支援を挙げた。

しかし、この要求はイランにとって国家主権の放棄に等しく、到底受け入れられるものではない。イラン側は、アメリカからメッセージが送られてきたことは認めつつも、交渉を行っていることについては否定した。その上で、アメリカ側の要求を一切拒否し、逆に5項目の要求を突きつけた。

再び戦争を強いられない不可侵の制度化、賠償金の支払い、ホルムズ海峡におけるイランの主権の完全な承認、親イラン組織を含む地域全体での戦闘終結、侵略行為と暗殺作戦の完全停止がアメリカへの要求だ。

イランの首都テヘランで国旗を掲げながら行進する人々=2026年3月13日(ゲッティ=共同)
写真提供=ゲッティ/共同通信社
イランの首都テヘランで国旗を掲げながら行進する人々=2026年3月13日(ゲッティ=共同)

トランプの「時間設定」が意味すること

賠償金の支払いやホルムズ海峡主権の承認など、こちらもアメリカにとって受け入れ難い「無理難題」である。両者は国際社会に向けた正当性を誇示しながら、出口のない水掛け論へと沈み込んだ。

原油価格の高騰を避けるためにも戦争終結を急ぎたいトランプ大統領は、3月22日、イランに対しホルムズ海峡を48時間以内に開放しなければ「イランのエネルギー施設」や「発電所」を攻撃すると警告していた。その後、24日には5日間の期限延期、26日にはさらに10日間の延期を発表した。

同時に、米国防総省が陸軍の精鋭部隊第82空挺師団の派遣命令を出し、第31海兵遠征部隊を強襲揚陸艦「トリポリ」に乗せてイランへ急行させている。第82空挺師団はパラシュート降下による緊急展開を担う、米軍でも特に機動力の高い部隊として知られる。

2019年7月15日、メキシコ湾で建造者試験を実施した米海軍の水陸両用強襲揚陸艦「トリポリ」(LHA-7)
2019年7月15日、メキシコ湾で建造者試験を実施した米海軍の水陸両用強襲揚陸艦「トリポリ」(LHA-7)(写真=Derek Fountain/HII提供の米海軍写真/PD US Navy/Wikimedia Commons

トランプ大統領が時間設定する場合は、ろくなことが起きない。イラン側は、トランプ大統領が交渉すると見せかけることで油断を誘い、イラン本土への上陸部隊を集結させる時間稼ぎをしているのではないかと不信感を募らせている。

今後、アメリカやイスラエルが攻勢を仕掛けようとも、イランが白旗をあげて停戦することは考えにくい。アメリカ側が優位な形で見切りをつけても、争いの長期化は避けられないだろう。