中東に散らばるイランの代理勢力
1981年、バーレーンでは、過激派組織「バーレーン解放イスラーム戦線」がイランをモデルにしたイスラーム体制を築くことを目指し、バーレーン政府にクーデターを起こす事件が発生した。クーデターは未遂に終わったが、「バーレーン解放イスラーム戦線」はイラン国内に拠点を持ち、シーア派宗教指導者ハーディー・モダッレシーの下にイラン情報機関や革命防衛隊の訓練・資金支援を受け、2000年初頭まで活動を続けた。
現在、紅海航行の安全を人質にとるイエメンのフーシ派も、イランから軍事・技術・資金面で支援を受けて育ったイランの有力な「代理勢力」だ。2024年の国連専門家報告では、フーシ派戦闘員が偽造パスポートでイラン、レバノン、イラクへ移動し、革命防衛隊の軍事訓練を受けていたと指摘されている。
また、フーシ派創設者フセインの父バドルッディーンは、イランの宗教都市コムでイスラーム学を学んだと言われ、昔からイランのシーア派宗教学者との交流があったとアラブ紙でもたびたび指摘されている。
一方、イランは国際テロ組織アルカイダとの繋がりも指摘されている。2009年、米財務省によるとアルカイダのムスタファ・ハミド氏がイランを経由して移動し、イラン国内で革命防衛隊に匿われ、活動を行っていたという。
ムスタファ・ハミドは、エジプト出身で1980年代の対ソ連アフガニスタン戦争にもアラブ義勇兵として参加した。その後、アルカイダに加入し、古参メンバーとして主にアルカイダとイラン政府の主要な仲介役を務めた。1990年代には、ビンラディンとイラン政府を仲介し、アルカイダ戦闘員がイラン国内を安全に通過できる「回廊」の確保に尽力したと言われる。
核問題が解決しても中東は“泥沼”になる
こうしてイランは、周辺国の内戦、親イラン勢力、テロ組織を利用して静かな力による現状変更を繰り返してきた。
トランプ大統領はイスラエルとアラブ諸国の関係改善を目指す「アブラハム合意」を2020年に仲介した。一方、サウジアラビアはイスラエルとの国交正常化の見返りにアメリカとの独自の防衛協定を望んできた。こういった動向はイランに対する脅威を見据えた結果だ。
3月24日、ニューヨークタイムズは、サウジアラビアのムハンマド皇太子がイランとの戦争を継続するようアメリカに働き掛けたと報じた。サウジアラビア政府は否定しているが、報道が事実であれば、中東諸国がイランの革命の輸出の脅威を深刻に受け止め、その解決を望んでいる証拠と言える。
革命の輸出はイラン現体制の国是であり、革命防衛隊の存在意義そのものだ。現在のイラン体制が続き、モジタバ最高指導者のもと革命防衛隊がさらに影響力を増していく中では、イランの革命の輸出は今後もさらに続いていくだろう。
仮に核開発の問題が解決されようとも、革命の輸出でイランの力による現状変更が続く限り、イランを最終的に屈服させたことにはならないのである。
3月28日、イエメンのフーシ派は、イスラエルに向けてミサイルを発射し、イラン戦争への参戦を発表した。ホルムズ海峡に続き、スエズ運河にも通じるバベルマンデブ海峡の「封鎖」の危機にも突入しようとしている。トランプ大統領は、開戦前には起こり得なかった新たな危機を自ら生み出し、これまで「革命の輸出」が築き上げてきた泥沼に陥り始めている。
中東に多くのエネルギーを依存する日本にとって、イランをめぐる争いは今後も大きな悩みの種となっていくだろう。

