世界的に進む「少子化」の背景にあるものは何か。ジャーナリスト池田和加さんは「数十万年前から人類が生き延びてきたのは社会的なつながりや、コミュニケーションの能力があったから。しかし、スマートフォンの普及とともに若者の対面時間が激減し、出産したいという欲求が減っていることを多くの研究者が指摘している」という――。
赤ちゃんを抱きながら、ストレスを感じている母親
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人類の終わりの始まり

アフリカで誕生したホモ・サピエンスだけが約20万~30万年におよぶ過酷な淘汰を生き残れたのはなぜか。

遺跡の発掘を通じて、進化の解明を目指している名古屋大学博物館教授の門脇誠二氏は「コミュニケーションをとるなど社会的なつながりの中で、環境変化や食料不足などのリスクに対応していた」(三菱グループのインタビュー)と語っている。つまり、「社会的なつながりや、コミュニケーションによって問題を解決していく」ことが人類の生存戦略だった。

しかし今、多くの研究者たちはひとつの静かな仮説を提起している。デジタル技術が、人類の太古から続く生存本能・戦略に干渉しているのではないか、と――。

スマホ普及と少子化加速の時期

韓国の合計特殊出生率は2015年の1.24から2024年には0.75に落ちた。フランスの出生率は2025年に第一次世界大戦終結以来最低の1.56を記録し、戦後初めて「自然減」の国になった。日本の2024年出生率は1.15と最少を更新し続けている。中国の年間婚姻件数は2013年比でほぼ60%減となった。

【図表】少子化の深層――主要データ・スマートフォンは、人間の繁殖本能を上書きしたのか
参照=INED, INSEE, Twenge & Spitzberg(2020)

「豊かな国だけの話だ」と思うかもしれない。しかしタイの出生率は2024年に1.0、インドの2.1はすでに置換水準を割り込み、ラテンアメリカは2024年に1.8、イランは1.7、トルコは1.5。文化も宗教も経済水準もまったく違う社会が、同じ時期に、同じ方向へ動いた。

唯一の例外がサブサハラ・アフリカで、現在も平均4.3を維持している。上記の国々との明確な違いのひとつは、スマートフォンの普及率がまだ低い地域だということだ。