「出会い」が社会から消えている
人間がパートナーを見つけるためには、まず物理的に出会う必要がある。飲食店、職場の廊下、サークル、偶然の帰り道――そういう場所が、SNSやオンラインゲームにすり替わった。驚くべきことに、米国の若者(15〜25歳)の対面交流時間は2003年から2017年の間に年間140時間減少しているという(Twenge & Spitzberg, 2020)。注目したいのは、この変化の時期は、スマートフォンが世界的に普及した時期と完全に重なるということだ。
スタンフォード大学客員准教授のアリス・エヴァンス博士は自身のSubstackの記事「出生が世界的に崩壊しているのはなぜ?("Why is Fertility Collapsing, Globally?“)2024年11月配信」の中でこう指摘している。
「オンラインエンターテインメントの質が劇的に向上したことで、社交や社会的スキルの発達が押しのけられ、出会いの形成や、婚姻内での子どもを持ちたいという意欲にも悪影響を及ぼしているのではないかと私は疑っている。これはあくまで仮説に過ぎないが、世界的なタイミングとパターンに合致している」
「母親になるより自由でいたい」
「物理的な出会い」の場の減少だけが問題ではない。SNSは人が「どんな人生を想像するか」にも静かに影響している。ブダペストのユース研究所のゲオルギナ・キシュ=コズマ副所長は、この問題を長年研究してきた社会学者だ。筆者との取材で副所長はこう語った。
「人気のある女優やセレブリティの多くが子どもを持たないか、代理母を選びます。若者はそうした人たちをSNSでフォローし、自分も永遠に若々しい体型を保ちたい、母親になるより自由でいたいと感じるようになっていきます」
実際に、フランス国立人口学研究所調査では「理想の子どもは3人以上」と答えた人の割合が1998年の50%から2024年には29%に急減した。日本でも同様の傾向が確認できる。日本財団の2024年調査によれば、子どもを持ちたいと考える人でさえ、「3人以上が理想」と答えた割合は17%にすぎない。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(2021年)でも、未婚女性の平均希望子ども数は初めて2人を下回った。欲しいという気持ちそのものが薄れているのは明らかだ。

