お金では少子化は止められない

そして、こうした少子化の構図に「補助金」はそれほど役に立たない。アメリカ・メリーランド大学のメリッサ・カーニーと同ウェルズリー大学のフィリップ・レバインが2022年に発表した論文が引用する試算によれば、年間約37兆円(2500億ドル)を追加投入しても、出生率の上昇は女性ひとりあたり0.2人にとどまるという。

「欲しい」という気持ちそのものが侵食されるという問題は、お金ではできない。

実際に、ハンガリーは2010年代からGDP比約5%という世界最大級の巨額な家族支援政策を展開し(日本は約2%)、2011年に1.23だった出生率を2021年に1.61まで回復させた。フランスも手厚い保育制度と家族手当を誇り、一時は大きな成果を上げた。

ところが、両国の出生率は再び下落に転じたのだ。ハンガリーは2024年に1.41(Eurostat)、フランスは2025年に1.56(INSEE)。両国の政策は置換水準の2.1には届かなくても、子どもを増やし、EUの平均出生率よりも高い値を今も維持し続けているのだから、決して“失敗“とはいえないだろう。むしろ、大胆な少子化政策がなければ生まれた子供の数はもっと減っていたのだ。そして、これらの国々が家族政策を常にアップデートし続けているように、この未曽有の課題においては、トライ&エラーを繰り返しながら、前に進むしかない。問われているのは政策の巧拙だけではない。子どもを持つことを「当たり前」でも「義務」でもなく、「喜び」として社会が再発見できるかどうかだ。

Metaに600億円の支払い命令

フランスは2018年から、ハンガリーは2024年から学校でのスマートフォンを禁止した。オーストラリアは2025年に16歳未満の子どもがSNSを使うことを禁止した。現在、世界の58%の国がスマホを学校で何らかの規制をしており(UNESCO, 2026年3月)、SNSの年齢制限を厳しくする国が増えている。

スマホに夢中になっている小学生男児
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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法廷も、同じ問いに向き合い始めた。2026年3月24日、アメリカ・ニューメキシコ州の陪審員がSNSの「Facebook」や「Instagram」を運営するMetaの責任を認定し、「児童性的搾取を放置した」として約540億円(3億7500万ドル=約600億円)の支払いを命じた。

翌25日には、ロサンゼルスの陪審員がMetaとGoogleが未成年者への依存を誘発するようにプラットフォームを設計したと認定し、(600万ドル=約8億7000万円)の賠償を命じた(Meta70%、Google30%負担)。

史上初めて、ソーシャルメディア企業が未成年者への弊害を理由に法的責任を問われたのである。