「恋愛しない、できない」人たちが可視化されただけ

仮に、いつの時代も25歳以上の未婚男の童貞率が25~30%で推移していたとしましょう。1980年代までは、このお見合いによって、いわゆる恋愛最弱者3割の未婚男性たちは救済されていたと解釈できます。もちろん、お見合い結婚の男性がすべて童貞だったとまでは言いませんが、お見合いによって初めて付き合うという体験をし、性体験をし、結婚したという男性がいなかったわけでもないと考えます。

その後、お見合い比率は5%台まで激減します。直近の25~34歳の未婚男の童貞率は29%ですが、彼らがアラフィフとなる20年後には、男の生涯未婚率は約30%になると推計されています。数字のつじつまは合っています。

自由恋愛を謳歌できるのは、しょせん3割の恋愛強者男女に限られます。中間層の4割はともかく、恋愛最弱者の3割は、今後も「恋愛は自己責任」という重い扉の前で途方に暮れてしまうことでしょう。未婚化や非婚化は、若者の恋愛離れでもなんでもなく、救済制度としての社会的マッチングシステムの消滅により可視化された恋愛最弱者3割の姿なのだと思います。

便宜上、強者と比較するために恋愛最弱者という表現にしていますが、この中には「恋愛したいのにできない層」と「そもそも恋愛自体に興味関心がない層」が混在します。前者には何かしら救いの手が求められますが、後者にとっては「非恋愛の自由」を謳歌しているのかもしれないという視点も必要かもしれません。

【関連記事】
カネのない結婚は不幸になるだけ…「年収400万円」を最低条件にする婚活女性を笑えない理由
江戸時代は未婚率が1、2割の地域も…家族社会学者が「30代独身の4人に1人が結婚願望なし」に全く動じないワケ
いかにもモテそうなのに…「学歴も職業も気にしない」と語る30代女性がまったく結婚できない"本当の理由"
「地位や年収が高くても断られる」結婚相談所のプロフィールに絶対書いてはいけない"NGワード"
「床上手」とはどういう意味か…江戸時代の遊廓で女性たちが体現していた「色好み」