原発議論がタブーだったドイツ国民もついに

さて、8月9日、いよいよEUのガス緊急プランがスタートした。言うまでもないが、EUの国々の皆がロシアに依存しているわけではない。なお、ポーランドは、今のところロシアのガスに依存はしているが、しかし、今回の有事を事前に察知し、ガスの備蓄タンクは満杯にしてあるという。

それにもかかわらず、これ以後、来年の3月末まで、すべてのEU加盟国が自主的にガスを15%節約することになる。目標は450億立方メートルの節ガス。

今、ドイツ国民の8割は原発の稼働延長に賛成している。それどころか7月30日、全金属産業連合の会長が、原発の新設を提唱している様子が第1テレビのニュースで紹介された。この11年間、原発についての議論は絶対的なタブーで、特に主要メディアが国民の間に思考停止を蔓延らせていたことを思えば、これはまさに衝撃の大転換だ。

原子力発電所
写真=iStock.com/Michael Nosek
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ただ、この国民の原発容認は、私に言わせればそれほど当てにならないし、新設には時間もかかる。

一方、問題はすぐそこに迫っている今年の冬だ。電気代もガス代も、多くの人々が支払えないほど上がると予告されている。しかも、一歩間違うと、電気もガスも切れ、死者の出る悲惨な冬になりかねない。そして、それを防ぐためには、ドイツはいずれロシアに屈服し、制裁を緩め、再びガスの量をずるずると増やしてもらうという選択肢しかなくなるかもしれない。緑の党にとってはこれからが正念場だ。

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