ユーロ危機をめぐる南欧諸国の恨みは深い

ただ、南欧諸国がドイツを敬遠している一番の理由は、なんと言っても、2009年のユーロ危機の際のドイツの対応だろう。ユーロ危機がギリシャの放漫経営によって誘発されたことは確かだが、しかし、当時、救済グループの先頭に立ったドイツが、財政が破綻してしまった国々に対して、どれだけアコギなことをしたかを彼らは忘れていない。

今回、スペインの環境相は、「われわれスペイン人は、エネルギーに関しては分相応の暮らし方をしてきた」と発言していたが、これは、当時、ドイツのショイブレ財相が南欧諸国に対し、「分不相応の暮らし方をしてきた」と責め続けたことへの皮肉だ。

ユーロ危機の根本原因は、ユーロの持つ構造上の問題に帰するところも多い。しかし、当時、独メディアはそれを伝えることはなく、ドイツ国民の間では、勤勉なアリであった自分たちが、怠惰なキリギリスを助けるいわれはないというような意見が大手を振っていた。一方、ギリシャは一時、過酷な緊縮財政のせいで、国内に「国境なき医師団」が入るほど経済が困窮したが、ショイブレ氏はそれでもなお、「彼らはまず宿題をすべきだ」と主張した。

そして、ドイツ国民は、自分たちが血税で、寛大にも南欧諸国を助けていると思い込んでいたのだ。ただ実際には、これら財政出動の多くは、結局、一連のユーロ危機の煽りで経営不振に陥った自国の金融機関の救済に充てられていた。そうするうちに、ドイツ経済はますます潤い、要するに、得をしたのは、この時もドイツだったのだ。

この期に及んでも「脱原発」は予定通り進め…

なお、現在進行中の不協和音もある。ドイツがこの期に及んでも、脱原発の計画を固持していることが、EUの国々を激怒させている。今、ドイツでは最後の3基の原発が稼働しているが、これをハーベック経済・気候保護相は、予定通り今年の年末で止め、脱原発を完成させるつもりだ。

どうすれば、エネルギー危機の真っ最中に原発を止め、他の国に連帯という名の犠牲を強いるという発想が出てくるのか? フランスでは、ガス緊急プランの発動は、ドイツの原発3基の稼働延長を条件にすべきだという声が上がり始めているという。

それなのに、原発が話題になり始めた途端、緑の党では、ハーベック氏も、レムケ環境相も、「ドイツが抱えているのは電気の問題ではなく、熱(暖房など)の問題だ」と主張し始めた。詭弁きべんもここまでくると笑い話にしかならないが、要するに、緑の党が守りたいのは国民でも産業でもなく、「脱原発」だ。つまり、電気は足りていると言いたいのだろう。そして、緑の党が「脱原発」を貫徹するために、EU各国が連帯してガスを節約しろと言われているわけだ。