この先のインフレ予想

FRBがどの程度政策金利を上げるかは、ひとえに米国のインフレ率にかかっています。図表2は米国のこのところのインフレ率ですが、2022年6月の9%台というのは、2%をインフレ目標としているFRBとしては耐えられる水準ではありません。

11月8日に中間選挙を控えるバイデン政権にとっても何としても抑え込みたい水準です。インフレは低所得層を直撃します。それでなくとも支持率が低迷しているバイデン政権には大きな重荷です。

【図表】米消費者物価、住宅着工、住宅価格指数

米国のこの先のインフレを正確に予測するのは難しいですが、雇用は堅調です。失業率は3.5%まで下がり、ほぼ完全雇用の状態です。世界中のエコノミストたちが注目している非農業部門の雇用増減数も、7月で52万8000人増と予想を大きく上回る数字でした。そのことも反映し、賃金は上昇を続けています。

賃金の上昇は、当然インフレの原因となります。米国ではGDPの約7割を支えるのが、個人消費ですが、賃上げは個人消費を生み、それが物価を押し上げるということとなっているのです。

そういった意味では日本の「コストプッシュ」型(生産コストの上昇により起こる)とは異なる、主に「ディマンドプル」型(需要量の増大に起因する)の、ある意味健全なインフレと言えますが、賃金上昇率よりも物価上昇率のほうが総じて高いという頭の痛い問題があります。

今回の米国のインフレは「コストプッシュ」の面もあります。ウクライナ情勢により、資源価格が高騰したことです。原油価格が1バレルあたり100ドルを超える大幅な上昇となり、それにともない、米国ではガソリン価格が1ガロン5ドルを超えるまでに上昇したのです。アメリカ人は日本より格段に自動車を運転しますから、ガソリン価格の上昇は、家計に大きく響くこととなります。

ただ、ここにきて原油価格も落ち着いてきました。100ドルを切る水準でこのところ取引されており、ガソリン価格も4ドル台に落ちています。

私が注目しているのは、住宅価格です。全米の住宅価格を指数化した「ケース・シラー住宅価格指数」は直近までは上昇していました。昨年比2割高の水準です。コロナによる在宅勤務の増加や低金利もあり、住宅価格が高騰したのです。先ほどの図表2にある通りです。

注意して見ていただきたいのは、同じ表にある住宅着工の数字です。新設の数字ですが、ここ2カ月程度は着工数が落ちています。いまだに年換算で150万戸台と高水準ですが、4月の180万戸水準と比べると格段に低くなっています。

そろそろ米国の住宅ブームも頭打ちというところでしょうか。

賃金、原油価格、住宅など、さまざまな要因が40年ぶりと言われるインフレを作り出していますが、その数字がどう変わるかで、FRBは政策金利の上げ幅を決めていくでしょう。

その結果次第で円キャリー取引が起こるかどうか。それは日本人の生活と財布に直結する重大事項なのです。

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