急激な円安化の動きが止まらない。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「インフレが8%台のアメリカは金融引き締めで金利を上げる公算が大きい。それにより日米の金利差はさらに広まり、円が売られる。また少子化・高齢化が進む日本の財政赤字は先進国中最悪で、GDPもここ30年ほぼ横ばい。ファンダメンタルズの弱さも目立ち、日本売りの要素に事欠かない」という――。

急激に進んだ円安と大きく揺れる株価の構図

円相場が大きく動いています。9月7日には一時1ドル=144円台まで円安が進みました(1998年8月以来、24年ぶりの安値水準)。ひと月ほど前には一時130円くらいまで円高方向に進んでいたのが、一気に15円近く円安となりました。

年初までさかのぼると、30円程度円安に振れています。今後も相場が大きく振れる可能性があるので、その動きには注意が必要です。

短期的にこれだけ相場が動いたのは、8月下旬に米国ワイオミング州ジャクソンホールで行われた金融関係者の会合で、米国の中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、インフレ対策のために引き締め気味の対応をするという「タカ派」的発言をしたことによります。

それにより、9月20、21日に行われるFRBのFOMC(連邦公開市場委員会)で、6月、7月に続いて0.75%の利上げが行われるという予想をする人が増えました。会合前までは0.5%程度と考えていた人たちが、日米金利差の拡大を予想して、円売り・ドル買いに動いたのです。

このところのドル・円相場、株式相場の構図は、米国のインフレに対しFRBが引き締め強化姿勢を見せると、日米金利差が広がるとの思惑から円安に振れ、金利が上がるともちろん景気には悪影響となりますから、NYダウは大きく下げる展開となり、その後も不安定な状況が続いています。

日本株もNYダウの動きに大きく影響されるので、NYダウほど大きくは動いていませんが、ダウが下げると日本株も下がり、ダウが上がると日本株も上がるということが多くなっています。単純化すると、インフレ懸念が強まりFRBが金利を上げるとの予測が増えると、円安、株安ということです。