円安を逆手に取って経済を回復させるにはどうしたらいいのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「何よりも大事なのは、インバウンド客を増やすこと、米など農産物の輸出促進、製造業の日本への回帰、の3つです」という――。

為替は「ビルト・イン・スタビライザー」

年初に114円程度だったドル・円レートが、147円程度まで円安が進みました。図表1にあるように、2020年度の平均レートは106円で、それに比べると30%以上円安に振れています。つまり、円は米ドルに対して30%以上、価値が落ちているということです。

テレビでは、この夏休みにハワイに行った観光客が「スパムのおにぎりが1000円以上した」「うどんが高くてびっくりした」などとインタビューに答えていましたが、米国ではインフレに加えて円安ですから、米国でも有数に物価の高いホノルルでは、日本からの観光客は物価の高さに驚くのも無理はありません。

政府・日銀も9月22日に145円に近づいたところで、円買い・ドル売りの介入を行い、一時140円台まで円高方向に戻しましたが、その効果もすぐに薄れ、145円台をつけました。この原稿を書いている10月13日時点では146円台後半です。

米国の政策金利が、現状3.0~3.25%の誘導ゾーンとなっており、今後も利上げが予想される中で、日米金利差が広がる上に、前回のこの連載でも指摘したように、長年、低成長に苦しみ、かつ将来も人口減少や財政赤字のさらなる悪化が予想され、日本のファンダメンタルズからも円が売られやすい状況です。

政府はこの際には、「円安」を逆手に取って経済を回復させることに大きく注力すべき時です。具体的には、インバウンド客の増加、輸出促進、製造業の日本への回帰です。

「ビルト・イン・スタビライザー」という考え方があります。「ビルト・イン」というのは組み込まれたという意味で変動する為替レートが自然に貿易収支などを改善し、円高に向かわせるように為替レートを調整するということです。

インバウンド、輸出、製造業の日本回帰、は、いずれも円買いを起こします。それにより、安くなった円が買い戻されます。もちろん、それらは、日本経済にもプラスに働きます。