2022年、欧米と同じように日本でもインフレの嵐が吹き荒れた。では、来年の経済状況はどうなるのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「日本経済の浮揚は、賃上げにかかっているところが大きい。インバウンドによる消費押し上げ力が弱ければ、デフレに逆戻りのリスクが浮上します。すると、企業業績が低迷して賃下げ、景気が冷え込み、また賃下げというスパイラルの恐れもある」という――。
一万円札を数える手元
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米国のインフレはピークを過ぎた

2022年は、ロシアのウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策など、世界を驚かせるような事件が相次ぎましたが、インフレの進行も大きな問題となりました。では、2023年はどうか。私は、インフレはかなり収まり、とくに日本ではデフレに逆戻りする懸念もあると考えています。デフレになると、企業業績は抑えられ気味で社員の給与も上がらなくなってしまいます。

なぜ、そうしたデフレ逆戻りがありうるのか。まず、ここまでのインフレについて、米国と欧州、日本の違いに関して、その内容を理解することから簡単に解説していきましょう。

米国では、コロナが蔓延し始めた2020年5月に0.1%まで下がった消費者物価でしたが、「ウイズコロナ」の経済政策とともに、2021年では年初に1%台だったインフレが年末には7%まで上昇し、2022年6月には9.1%まで上昇しました。しかし、その後は、徐々にですが低下を始め、11月には7.1%となっています。

欧州では、ウクライナ情勢にともなうロシアからの天然ガス供給の制限があり、米国と違い、2022年の後半でもインフレ率は上がり、11月にはユーロ圏(通貨ユーロを使っている国19カ国)や英国で10%を超える水準となっています。

一方のアジア。中国では、「ゼロコロナ政策」の関係でマンションや商業施設などの封鎖が続き、インフレ率は1月では2.1%と経済の弱さを反映した状態となっています(その後、各地でデモなどが起こり、ゼロコロナを少し緩めるということになっていますが、経済の混乱はしばらく続きそうです)。

日本はどうか。インフレ率(消費者物価指数、生鮮のぞく総合)では、10月に前年比で3.6%、実に40年8カ月ぶりの上昇となりました。とくにスーパーなどに並ぶ食品などの値上がりが大きく、マスコミもそのことを大きく伝えています。

【図表】米国と日本の物価上昇率
筆者作成