2023年、日本はデフレに陥るか

コストプッシュ要因でのインフレ、とくに原油価格上昇など、資源価格上昇による要因は米国同様、2023年初から徐々に消えていくことになります。ただし、日本の場合には、円安の要因のインフレがあります。図表2でドル・円レートを振り返ると、現状の135円程度になったのは、2022年の6月以降です。逆に言えば、現状程度の為替レートが続くと仮定すると、2023年夏あたりから円安による物価上昇要因は消えていきます。そして、その頃から私は、日本経済はデフレに逆戻りするのではないかと心配しています。

一万円札と千円札を持つ男性の手元
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです

政府や連合は、賃上げを強く要求しており、それがディマンドプル型のインフレを生めばいいのですが、先に述べた理由で国内だけで活動する企業の賃上げはかなり難しく、十分な力があるかどうかは疑わしいところです。

今後の日本経済の浮揚は、賃上げにかかっているところが大きく、さらにはインバウンドによる消費押し上げの可能性もありますが、その力が弱ければ、デフレのリスクが浮上します。

デフレになると、企業、とくに国内だけで事業をする企業や中小は価格が頭打ちとなり、場合によっては値下げということにもなりかねません。当然、業績は伸び悩み、給与の上昇は望みにくくなります。昨今は賃上げする企業も出てきましたが、一転、賃下げということも十分ありえます。ない袖は振れないのです。下手をすると、賃下げがさらに消費を冷え込ませ、企業業績がさらに悪化、さらに給与が下がるという「デフレスパイラル」にもなりかねません。つまり、海外で儲けている企業と国内だけで事業をする企業・中小企業の格差はさらに大きくなるのです。これは私が悲観論者だからではなく、客観的な判断でそう言えます。

2023年は、日本でもコロナの経済への影響が下がり、中国のゼロコロナ政策も緩和の方向に向かい、ウクライナ情勢も和平に動き出すと期待しています。そうなれば、経済は少し落ち着きを取り戻すと思いますが、そのことが日本の経済力の弱さを可視化し、人々のモチベーションが損なわれないことを願うばかりです。

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