日米金利差が4%を超えると「キャリー」が起こる

従来、日米金利差が4%程度開くとキャリー取引が起こると言われています。

理論的には、4%以下の金利差でもキャリー取引は起こってもおかしくないのですが、為替レートの変動を考えると、小さい金利差でキャリー取引を行うにはリスクが大きいと言えます。

たとえば、2%の金利差があったとしても、1年運用するとして、現状の円相場が2%(2.7円)動くだけで、儲けはなくなります。ここでは、1年間を想定しましたが、このところ、ドル/円相場は数日で数円動くことも少なくありません。2%の金利差で儲けられる額など、短い期間ならわずかでしかなく、為替の変動リスクが運用にとても大きなダメージを与える可能性があるのです。

そういうことも含めて、4%くらいの金利差というのが、キャリー取引が起こる引き金と言われています。

すべてはFRBの利上げ幅にかかっている

円キャリー取引が起こるかどうかは4%の金利差と書きましたが、それは、FRBが政策金利を上げるかどうかにかかっています。

FRBが政策金利を上げるかどうかの決定は、FOMC(連邦公開市場委員会)という会合で行います。年内の今後の開催予定は、9月、11月、12月の3回です。FRBは年内の3回の会合すべてで、利上げを行うことを予定していますが、その上げ幅が問題なのです。

9月の会合では、FRBのパウエル議長は0.5%の利上げを示唆していますが、理事の中には0.75%を主張している人もいます。インフレに対する認識の違いです。

つまり、この先も6月の9.1%というような異常なインフレが続くと見るのか、それとも少し鎮静化すると見るかで、利上げ幅が変わってくるのです。最近発表された7月のインフレ率は8.5%でしたが、このトレンドが続くかは不明です。

先にも述べたように、現状2.25%から2.5%の誘導ゾーンにある政策金利ですが、3回のFOMCともに0.5%の利上げである場合には、年末には3.75%から4%が誘導ゾーンとなります。もし、そのうちの1回が0.25%なら、3.5%から3.75%となります。この金利なら、キャリーが起こるかどうかは不明です。

一方、年内の3回とも0.75%ずつの利上げなら4.5%から4.75%となるわけで、これは円キャリー取引が十分に起こりえる金利水準です。

逆方向にたなびく星条旗と日の丸
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