コーポラティブハウスは、手間はかかるが、一般のマンション販売などと比べて「顧客からいちばん喜ばれる仕事」(中川)である。そこに大きな魅力を感じた中川は、1999年、31歳のとき同社に入社するのである。

現在のメーン事業はホテルのリノベーション(改装)。06年に日経優秀製品・サービス賞最優秀賞/日経MJ賞を受賞した「キッザニア東京」(東京・江東区)の開発・設計も都市デザインシステムの仕事である。

創業者から社長の座を引き継ぎ多忙に過ごす中川は、「井の中の蛙」から抜け出すために、「外で勉強しなければ」という強い意識を持っていた。

別の言葉でいえば「我流ではこれ以上伸びない。他流を学ばなくては」(中川)ということだ。しかし、留学してMBAを取得する、通学するといった時間的・空間的に拘束される学び方では、あまりにも非効率。だからEラーニングの大前経営塾を選んだというのは、前出の河村や飯田と共通している。

いま中川は、「大前経営塾ではスキルではなく『思考の軸』を身につけられたことが大きい」と振り返る。

それに加えて「大前さんが発信する海外情報は、世の中の動きを先取りしていて、とてもおもしろい」という。

たとえば、日本企業が中国ばかりに注目していた04年当時に東欧社会の動きを詳細に追い、ビジネスチャンスが中・東欧諸国にあることを説いている。

「最初は『なんで東欧?』と思いましたが、大前さんの話をよく聞いてみると、なるほどと納得できました」

都市デザインシステムは中国に進出済みだが、中川は次の市場としてトルコに着目している。

「トルコでは数年前の大地震をきっかけに耐震基準が強化され、耐震化の需要が増えています。まれに見る親日国でもあります。ところが日本企業はまだあまり進出していない。チャンスが大きいと思うんですよ」

こうした「世界の見方」を中川は大前から学んだという。はつらつと語る中川に、「井の中の蛙」の面影はすでにない。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐美雅浩、的野弘路=撮影)