「店で提供されているから安全だ」と思わないほうがいい

こうして羅列すると、家畜の種類により問題となる細菌の種類が異なり、ウイルスや寄生虫の心配もあって、判断が複雑にならざるを得ないことがおわかりでしょう。どうも、店の知識がこの複雑さに追いついていません。店で提供されているから安全だ、とは思わないほうがよいでしょう。

現在、肉の生食で大丈夫、と言えるのはまずは、生食用基準を満たした牛肉の刺身やユッケ、たたきなどです。基準をクリアするには、設備投資と講習会を受講した「生食用食肉取扱者」、それに品質のよい肉を速やかに加工提供するフローが必要で、かなりのコストがかかります。当然、高価な一皿になりますので、安すぎる店にはご注意を。

また、馬肉は、冷凍により生食できる、とされています。腸管出血性大腸菌などが心配ですが、生きている馬自体は腸管出血性大腸菌は持っていないようです。寄生虫サルコシスティス・フェアリーがいるのですが、肉の中心部がマイナス20度で48時間以上冷凍されれば、寄生虫は失活します。そのため現在は、馬刺しなど生食用馬肉は冷凍のうえで出荷されています。

ただし、こうした「食べられる肉の生食」であっても、高齢者や子供、妊婦、疾患を抱える人などは、自衛のために避けるのをお勧めします。少数の菌やウイルスなどが体内に入っただけで感染しやすく、重症化もしやすいためです。直前にしっかり火を通して食べる料理であれば、菌やウイルス、寄生虫などを一網打尽でやっつけたうえで食べられます。

消費者も自身の体調と相談しつつ、知識を得て食中毒リスクを回避する努力をしなければいけないというのが現状です。

(記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます)

<参考文献>
株式会社OMOウェブサイト
厚労省・食中毒
千代田区・肉の生食には注意しましょう

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