コロナ禍では減少したが、今年に入ってから増加の兆しが
カンピロバクターは、鶏のほか牛、豚などの腸管内にいる細菌で、感染すると発熱や倦怠感、頭痛、腹痛、下痢等に見舞われます。食中毒は例年、300件前後発生しています。原因の約9割は鶏肉の刺身、表面を炙っただけのたたきなどです。
死亡例は国内では確認されていないのですが、一部の人は数週間後、手足が動かなくなったり呼吸困難に陥ったりする「ギラン・バレー症候群」となり、後遺症に苦しむケースがあります。
カンピロバクターは、腸管出血性大腸菌O157やサルモネラ菌より知名度が低いのですが、食中毒発生数はそれらよりも多いのです。この2年間は、新型コロナウイルス感染症対策に伴う衛生管理や飲食店の時短営業等が功を奏したのか、食中毒全体の発生件数は減っています。
ですが、今年はその反動か増加の兆しがあります。問題のラーメン店がある愛媛県松山市では5〜6月にカンピロバクター食中毒が5件起き、県と市が合同で初の「カンピロバクター食中毒注意報」を出しました。
年間の患者数は2000人ということになっているが…
厚生労働省の食中毒統計によると、患者数は例年約2000人となっています。たいしたことがないなあ、と思った人もいるかもしれません。実はこの数字、実態を反映していません。厚労省の食中毒統計は、具合が悪くなり病院を受診し検便検査などを経て食品が原因として確定した人数です。ですが、実際には食中毒になっても病院にかからないことや、病院で検査をしない、というケースも多いのです。
国立医薬品食品衛生研究所の研究者らが行っている、積極的に電話をかけて住民調査をするなどして実態をつかもうとする「アクティブサーベイランス」を用いた研究によると、2019年の全国のカンピロバクター食中毒患者数の推計はなんと88万3954人とされています。この研究をもとにすれば、年間に成人の1%近くが感染しており後遺症が出ている可能性もあります。そう考えると、実は深刻な問題であることがおわかりでしょう。